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練習中です。
寝てたくせに、リレーの選手だと知った山根はブツブツ文句を言って笑顔の田中に腹にパンチもらってた。それを見たクラスメイト達は一気に団結力が高まり、練習にも身が入る。
「やぁーっ!!」
必要?って掛け声で田中が赤色の柔らかい玉をカゴ目掛けて投げる。
偶数組は白チーム、奇数組は赤チームで分かれており、1年から3年までその2つのチーム対抗になっている。ちなみに、俺は3組なので赤チームだ。
MVPには一ヶ月学食食べ放題券がプレゼントされるので、山根は急にやる気を出してきた。
「...あ、外れた。」
「うるさい、矢作。とにかく投げろ。そして点数を少しでも多く稼げ」
やる気はあるが、田中も俺と同じで運動は苦手なようだ。山根の腹にくれたパンチは幻だったのか。
体育の時間は、体育祭りの練習にあてられるようになった。
この時ばかりは、いつもは別の女子も一緒に体育をする。なので、いつもより格好つけたい男子が自分の実力以上の事をしようと張り切っている。
「あはは、田中、目閉じて投げたら入らないよ~」
玉入れチームの女子に笑われながらも一生懸命な田中を見習って俺も落ちていた赤い玉を拾ってカゴ目掛けて投げた。
「おぉ!矢作!入った!!」
自分の事のように喜んでくれる田中に、笑みがこぼれる。
「あっ!尾関くんだ!」
嬉しくなってもっと投げようと赤い玉を拾っていると、女子の黄色い声が耳に入る。
ポトっと玉が手から落ちた。
「え?どこ?ぎゃー!格好いい!!」
女子は玉入れよりも圭人に夢中。
俺はそこを見ないように、落とした玉を拾った。
「まじ格好良いよね、尾関くん」
「知ってる?4組の美奈子。尾関くんに振られたらしいよ」
「まじ?」
「まじまじ。遊んでた女の子全員切ったんだって。本命いるって噂」
遊んでた女の子全員切った
本命がいるって噂
女子のセリフが頭の中でグルグルする。
「おい!練習しろっ!!」
田中に注意され、女子はぶーたれながらも玉入れの練習を始めた。
俺も赤い玉を握りしめ、適当にポンポン投げてみるけど どれもカゴに入らない。
「矢作!やる気はどうした?」
「あー、うん。」
曖昧に笑いながら、ふと顔を上げると教室で授業を受けている圭人と目が合った。
こっちに向かって微笑み、手を振っている。
それから目を逸らして玉入れに集中するけど、圭人の視線を感じて全く玉は入らずに田中に怒られた。
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