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山根の決意です。
「なぁ。見た?今の俺の華麗な走り」
気持ちが落ちてる俺に、リレーの練習をしていた山根が近づいてくる。タオルが無いからか、体操服の裾で額の汗を拭いながら。裾から見える腹筋はバキバキに割れていて、無防備で爽やかな色気を振りまいている。
「...見てない」
「まじか?」
山根のバキバキ腹筋に女子がきゃー!と騒ぐ。が、凛一筋の山根は女子の黄色い声に気にする様子もない。
「俺、見た!素晴らしいな、山根!」
田中に褒められ、山根はニヤリと笑った。
田中は褒めて伸ばすタイプのようで、お前ならMVPだ!赤組優勝だ!とか言われて、山根はますます笑みを深くする。調子に乗り出している。
「やめてよ、田中。謙ちゃんすぐ調子に乗るから!」
可愛いらしいキャラのタオルを手に、凛が近づいてきて山根の汗を拭う。それにも女子の悲鳴が響く。2人は2人の世界があるから気にしていない。
「学食無料券は俺の物だ」
「もー。すぐ調子乗る。今年は虹太兄ちゃんもMVP取るって張り切ってたよ」
「...は?」
虹太兄ちゃんは凛の一つ上のお兄ちゃんで、浜口兄たちの中でも特に凛を可愛がっている。凛の彼氏の座を射止める為に最も苦労したのが虹太兄ちゃんを説得する事だった。やんちゃな虹太兄ちゃんの説得は大変で2人とも生傷が絶えない日々を過ごしていた。なので、山根は虹太兄ちゃんがちょっと苦手だ。
「...あー、そうか。あの人、やる気かぁ」
「もちろん、MVPは謙ちゃんだって虹太兄ちゃんには言っておいたからね」
語尾に♡マークがつくほど可愛く言い切った凛に、山根は顔を青くさせた。
「...まじ?言っちゃった?」
虹太兄ちゃんの引きつった笑顔が浮かぶ。あそこの兄弟は可愛い妹の前では皆、猫を被っている。
「うん!学食のプリン食べさせてね」
「...!!任せろ!」
首をかしげ、可愛くウインクした凛とは対象的に涙目になりながらも、山根はどん!と胸を叩いた。
どんまい。
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