26 / 93
田中は運動音痴です。
体育祭りの練習も順調だ。
と言っても、俺の出る玉入れなんて2回くらいで飽きてしまう。
「そこーー!もっと走らんかー!!」
飽きた玉入れチームの俺達は、リレーの練習に明け暮れるクラスメイトを叱咤激励する田中を見ていた。夢中な田中は髪を振り乱し、メガホンで大声出す。リレー選手達は笑いながら手を振っていた。
「呑気かーーー!!!」
1人でプンスカ怒っている田中に、玉入れチームも笑ってしまう。
「田中。暑いでしょ?ちょっとは休憩しようよ」
女子の誘いに田中は首を横に振る。
「暑いのは皆同じだろ?あいつら頑張ってんのに休んでられない」
キラリとメガネが光る。
田中の男前発言におぉ~と声が上がった。
「...よし!俺も応援する!」
立ち上がり、田中のそばに立ち、ちょうど走り始めた山根に声援を送る。
「やーまーねーー!」
めったに出さない大声に声が震えていたけど、山根は俺の声援に驚いた顔して、そして笑顔で応えてくれた。
大声出すって気持ちいいな。
あれから圭人とは全く連絡を取っていない。終わったんだと、連絡先も消した。モヤっとする気持ちはあるけど、前に進まなければいけない。
凛も、必要以上に何も聞いてこなかった。
「頑張れ~!!」
いつの間にか玉入れチーム全員で応援していて、皆好き勝手に大声を出していた。
「あーつーいー。優羽、飲み物買いに付き合って~」
走り終えた凛がヘトヘトな様子で近づいてくる。
「いいよ。行こ」
連日、暑い中練習しているので皆ヘトヘトだ。特にリレーは華やかだけど、その分練習量も多いしキツイ。
山根の分も頼まれて、俺と凛は自販機目指す。
「玉入れ、どぉ?」
「どぉ?ってほど練習してないからなぁ。あとは、当日のやる気くらいかな」
「田中、全然入らないよね。人一番頑張ってるのに」
「そうなんだよね。不思議だよね。わざとかと思ったもん」
「あはは。それはそれで面白いよね」
「うん。面白い。田中だと特に」
自販機でスポーツドリンクとお茶を買って、みんなの所に戻る。
ともだちにシェアしよう!