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ワンコです。
「先輩!!」
優しい低音が耳に届く。
「あら。あらあらあら。」
凛がおばちゃんみたいに、近寄って来る松木君をニヤニヤしながら見ている。
内心その笑みに嫌な感じを覚えながら松木君に手を振った。
「体育祭りの練習ですか?」
「そうなの。松木君、今日もワンコみたいで可愛いね!」
すっかり松木君に慣れた凛は俺が思っていたこ...失礼なことを言う。
「わ、ワンコですか?」
「そうそう!柴犬みたい!松木君大きいけど」
眉毛を下げて笑う松木君は困ったように俺を見た。
「凛、いくら松木君がワンコみたいだからって本人に言うのは失礼だろ」
「わっ!先輩も俺の事、ワンコって言った!!」
「あ!!」
「あはは。優羽、正直!でも、松木君、ほんとワンコみたい。髪の毛も柔らかそう」
撫でてみたいよね、って言う凛に思わず頷いて同意する。だって、本当に松木君の髪の毛って瞳と同じ焦げ茶色で綺麗なんだもん。
ふわふわと柔らかそうで。
「そっすか?じゃあ、はい。どうぞ」
松木君が体を傾け、俺の前にはふわふわな松木君の頭が...!!
「い、いいの?」
「いいですよ」
ほらほら、と松木君が頭を近づけてくる。
俺はゆっくりと髪の毛に触れた。
思った通り、柔らかい感触。
「わ、や、柔らかい、ね」
本当にワンコみたいで気持ちいい。
気持ち良すぎて、わしゃわしゃと遠慮なく撫でる。
「へー。やっぱりワンコだね。優羽も髪、綺麗よね。シャンプー何使ってるの?」
「俺?家にあるの使ってるから分かんない」
「ふは。先輩、くすぐったい」
頭を撫でている手を掴まれて、動きを止められる。
「わ、あ、ごめん。なんか、気持ち良くて」
慌てて手を引くけど、松木君に掴まれたままで。引いても松木君はニコニコしたままで離してくれない。
「松木君?」
「俺も!先輩の髪の毛触って良いですか?」
「あー、いいよね、優羽!」
何故か凛がニコニコして答えた。
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