27 / 93

ワンコです。

「先輩!!」 優しい低音が耳に届く。 「あら。あらあらあら。」 凛がおばちゃんみたいに、近寄って来る松木君をニヤニヤしながら見ている。 内心その笑みに嫌な感じを覚えながら松木君に手を振った。 「体育祭りの練習ですか?」 「そうなの。松木君、今日もワンコみたいで可愛いね!」 すっかり松木君に慣れた凛は俺が思っていたこ...失礼なことを言う。 「わ、ワンコですか?」 「そうそう!柴犬みたい!松木君大きいけど」 眉毛を下げて笑う松木君は困ったように俺を見た。 「凛、いくら松木君がワンコみたいだからって本人に言うのは失礼だろ」 「わっ!先輩も俺の事、ワンコって言った!!」 「あ!!」 「あはは。優羽、正直!でも、松木君、ほんとワンコみたい。髪の毛も柔らかそう」 撫でてみたいよね、って言う凛に思わず頷いて同意する。だって、本当に松木君の髪の毛って瞳と同じ焦げ茶色で綺麗なんだもん。 ふわふわと柔らかそうで。 「そっすか?じゃあ、はい。どうぞ」 松木君が体を傾け、俺の前にはふわふわな松木君の頭が...!! 「い、いいの?」 「いいですよ」 ほらほら、と松木君が頭を近づけてくる。 俺はゆっくりと髪の毛に触れた。 思った通り、柔らかい感触。 「わ、や、柔らかい、ね」 本当にワンコみたいで気持ちいい。 気持ち良すぎて、わしゃわしゃと遠慮なく撫でる。 「へー。やっぱりワンコだね。優羽も髪、綺麗よね。シャンプー何使ってるの?」 「俺?家にあるの使ってるから分かんない」 「ふは。先輩、くすぐったい」 頭を撫でている手を掴まれて、動きを止められる。 「わ、あ、ごめん。なんか、気持ち良くて」 慌てて手を引くけど、松木君に掴まれたままで。引いても松木君はニコニコしたままで離してくれない。 「松木君?」 「俺も!先輩の髪の毛触って良いですか?」 「あー、いいよね、優羽!」 何故か凛がニコニコして答えた。

ともだちにシェアしよう!