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虹太兄ちゃん。
「そいや、田中怒ってたぞ」
凛から飲み物を受け取り、山根が俺に向かって言う。
「あ!練習中だった」
松木君に会って、思ったより時間が経っていたようだ。すっかり、玉入れの事を忘れていた。
「っても、玉入れチーム片付け始めてたからもぅ終わるよ」
リレーチームも解散したから、それも伝えにここに来たらしい。
「あー、田中に謝らなきゃ」
「うん。謝っとけ。あいつ、頑張ってるからな」
「いいヤツよね、田中」
「おい、褒めるな」
山根は男前だが、凛が絡むと心が狭くなるのが残念な所だ。
「おー、凛!」
着替えるために歩き出してすぐ、声をかけられる。
「...げ。この声」
「虹太兄ちゃん!!」
2階の窓から顔を覗かせているのは凛の兄の虹太だ。上の兄たちはそうでもないが、虹太は凛とそっくりの女顔。本人も気にしてるようで、そこをいじると大変な事になる。
「優羽、久しぶり!...あと、誰だ?おめー」
「あっはっは。嫌だなぁ、毎日会ってるじゃないですか、お兄さん」
虹太兄ちゃんと山根の間には、火花がバチバチいっている。いつもの事だ。
「はぁぁ?お前ごときが『お兄さん』呼びするなんざ百億年早いんですけど!!」
「いやいや!10年以内に!確実に!絶対!義兄弟になりますけど!!」
「はぁぁあ?認めるわけないだろ?お前、体育祭りのMVPも狙ってるらしいじゃん。笑わせんな」
1階と2階で繰り広げりるくだらないやり取りを俺と凛と虹太兄ちゃんと仲良しの須田さんが、冷ややかな目で見ていた。
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