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可愛いです。
唐揚げは本当に美味しくて、俺はもぐもぐよく噛んで味わった。お店のよりはなんか素朴で、母さんの味みたい。そんな俺を、松木君はニコニコしながら見ている。
「先輩のお弁当も美味しそう!」
俺のズルイ発言を違う意味で捉えたのか、松木君は俺の弁当を褒めだした。
俺のは母さん作だが、料理上手なのでどれも美味しい。
「先輩、リスみたいですね。口、もぐもぐしてて」
「リス?」
「うん、口もぐもぐしてて可愛いです」
へにゃ、と笑う松木君の言葉に顔が赤くなるのが分かった。
「...っ!な、な、可愛いって...」
「うん、そこで顔赤くするのも可愛い」
「...っ!!」
ニヤニヤ笑う松木君。
これは、アレだ。意地悪だ。
そして、やっぱりタラシだ。
「...松木君に甘いのあげようと思ったけど、やめた」
「え?甘いの?わ、欲しい!」
途端に松木君は目を輝かせて俺に甘いのをねだる。
「チョコ?飴?ガム?チョコ?」
松木君はチョコが好きらしい。
俺は笑いがこみ上げできて。ポッケに入れてあったチョコをあげた。
「あ、俺の好きなチョコ!」
「弁当食べ終わってから」
「はい!」
松木君は大きな口で唐揚げを頬張り始める。口の中いっぱいで、どっちがリスか分からない。
「しょーいあ、おで、こんろの」
頬張ったまま話し出した。
何を言っているのか理解出来なくて笑えてくる。
「ちゃんと飲み込んでよ。聞き取れない」
「...っぐ、ん、俺、体育祭りで借り物競争に出ることになったんですよ」
「え?借り物競争?」
わが校の借り物競争は面白ければいい!なノリでまともな借り物が書かれていない。校長のズラとか、学食のおばちゃんとかむちゃ振りがすごい。でも、そこが面白くて人気競技の一つだ。
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