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可憐に微笑む彼女。
俺を睨み、彼女は携帯を取り出して俺に見せつけた。見せられた画面には、手を繋いで歩く俺と凛の後ろ姿がある。
「先輩、山根先輩の彼女と浮気してますよね?」
「...え?あ、いや、俺と凛はー」
「最低!!友達の彼女と浮気するなんて!!そんな最低な人と一緒にいて欲しくない!」
俺の言葉に被せるように彼女の罵声が飛んできた。瞳を大きく開き、眉間に皺をよせ、いきなりの豹変ぶりに、俺に詰め寄る彼女ははっきり言って怖い。
「ちょ、待って」
「太一郎に会わないで下さいっ!」
「だから、俺と凛はそんなんじゃ...っ.」
興奮してきたのか、次第に声が大きくなる彼女に聞こえるように声を出すけど彼女の瞳は俺を見ていない。必死に自分の主張をしているだけだ。
不意に彼女の動きが止まる。
「ーそれとも、尾関先輩?」
「...え?」
何かを確信したのか、今までの狂気じみた顔からまるで天使のような笑顔。背中に冷たいものが走る。
言われた事が理解出来なかった。
「...やだぁ。マジだったんだ」
血の気の失せた俺を見て、彼女は俺を汚いものを見るようにして、...笑った。
「最初聞いた時は冗談だと思ったけど...ふーん。先輩、男の人が好きなんだ?」
さっきまでの乱れた姿が嘘のように、初めて見た時のように可憐に微笑む彼女。
トンっと人差し指で俺の胸を押して。それだけなのに、俺は足に力が入らなくてふらついてしまった。
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