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浮かれすぎ。
その後4人で他愛もない話をして、山根と凛が教室に戻って行く。
俺と松木君はもう少し残る事にした。
フェンスにもたれ、時間だけが過ぎる。
俺と松木君は何も話さない。時々、視線を感じて振り向けば優しい笑みを浮かべた松木君がこっちを見ている。ので、恥ずかしくて俺は顔を背けた。それの繰り返しで時間だけが過ぎる。
「...っ!!」
不意に手を握られて体が硬直する。
「先輩の手、可愛いですね」
「へ?そ、そう、かな?」
変に上ずった声が出て、余計恥ずかしい。
今まで、どうやって話してたっけ?それすらも分からなくなるほど頭が混乱していた。
「ま、松木君は、キレイな手、してるよね」
握られても握り返す事が出来なくて、俺は変に手に力を入れていた。
「そうですか?あ、でも、俺、手デカイんですよ」
ほら、と俺の手と自分の手を重ねる。
確かに、第一関節分、松木君の手が大きい。
そのまま、また指を絡めるように握られる。
「...へへ」
松木君はへにゃへにゃって笑うと顔を足の間に埋めた。
「...やばい。俺、今、めちゃくちゃ嬉しいです」
足の間から覗く耳は真っ赤になっていたので、釣られて俺まで顔が熱くなる。
「...あっ!!!」
勢い良く顔を上げた松木君は今度は顔を青ざめて俺を見た。
「う、浮かれてた」
「...?」
ガバッと両手を握られ、少したれ目の優しい瞳がいつもよりも真剣な瞳で俺を見つめる。
「俺、浮かれてました。まだ、ちゃんと自分の気持ち伝えてない」
「...っ!」
握られた手が熱い。
熱いところだらけだ。
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