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不意打ちです。
ただ、触れただけの唇は暫くして離れていく。
「...松木君」
「...はい」
お互いに顔を真っ赤にして、言葉も見つからずに見つめあう。
「...っぷ。ははは」
「...っく。ははは」
同じようなタイミングで堪えきれずに吹き出した。
俺も初めてじゃないし、松木君も多分、初めてじゃない。なのに、俺は目も閉じれなかったし呼吸すら出来なくって。ぶつかっただけの拙いキス。それが、凄く嬉しい。
「あ〜、恥ずかしいな」
両手で顔を覆った松木君はほんとに恥ずかしそうでチラッと見える耳は赤くなっている。大きな体で可愛い行動をする松木君に、胸きゅんした俺はその手を掴んで...
ちゅ
引き剥がして唇に...ではなく、顔を覆ったままでちょっとだけ見えていたおでこに口付けた。
「...ぇ?」
不思議そうに指の隙間から俺を覗く松木君。
「へへ。不意打ち」
その顔が可愛くて、俺は心が暖かくなって笑った。
「あ〜...やばい」
顔を真っ赤にした松木君が腕を伸ばして俺をつかまえる。ゆっくりと近づいてくる松木君に、今度は瞳を閉じた。
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