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目撃されました。
優しく触れるキスを何度も何度もして、最後に抱きしめられると松木君の心臓がすごい速さで動いていて。その音と胸の中の暖かさに幸せだなぁ、と思った。
「んー...。教室戻りたくないです」
すりすりと頭を俺の肩にすり寄せてくる松木君が本当に犬みたいで思わず笑ってしまった。
「ふふ。俺も」
ぎゅっと背中に回した手に力を込めて抱きついた。
「...サボ」
「だめ」
「...ですよね」
途端に項垂れる松木君の頭をよしよしと撫で、密着を楽しんで教室に戻る。学年が違うので戻る教室も違う俺達は人目に付きやすい手前でいつも別れる。
「じゃあ、先輩。帰りにね」
名残惜しそうに何度も何度も振り返って手を振ってくれる松木君に小さく手を振り返してサヨナラする。
その姿が見えなくなるまで動かずに見送った。
「みーちゃった」
揶揄うような口調に反射的に振り返ると、虹太兄ちゃんと須田さんがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
知り合いに見られた気恥しさに、俺は慌ててしまう。
「な、なにしてんの?」
「ふはっ。何 動揺してんだよ」
2人に近づけば、虹太兄ちゃんに頭をくしゃくしゃにして撫でられる。
「今の、1年の子だろ?桃がイケメンだって騒いでた」
桃は、須田さんの妹だ。松木君と同じ1年生で須田さん似の美人なのに松木君見て騒ぐって可愛いらしい。やっぱり人気者だな、松木君。
「何?仲良し?」
「う、ん。まぁ。仲良し、かな」
わかりやすく しどもろどろの俺を見て虹太兄ちゃんは意地の悪い笑みを浮かべる。
「へぇー。ふーん。へぇー」
「...なに?」
「いやー?可愛いなぁ、優羽?」
「な、何が?」
「なんもなんも!!な?蒼!!」
「ん?んん。可愛いな」
須田さんは会話をしながら、どこか違う方向を見ている。その為、会話がイマイチ噛み合っていない。
「蒼?」
「あ?いや、何でもない」
その時、須田さんが見ていたのは1人の少女の背中。しかし、そこにはもう誰の姿も無かった。
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