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熱視線を感じます。
「視線を感じる」
そう言ったのは凛だった。
「視線?」
「そう!ここ最近!!」
わざとらしく周りをキョロキョロして視線の主を探しているフリをする凛。
「なんだ?浜口、モテ自慢か?」
呆れ口調の田中は外人ばりに肩を竦めるリアクションをとった。
今は、体育祭りの最後の練習中。の、談笑中。我ら玉入れチームはすでに練習を終え、喋っていると凛が近寄ってきたのだ。
「いや、凛はほんとモテるよ、田中」
「や、分からんでもないが、真顔で言うな。矢作」
「ほんとだよ。ってか、凛にそんな熱視線送るなんて山根にバレたらそいつ大変じゃん」
「違うの!そんな熱視線じゃなくて!あー、でも、熱い視線なんだけど、浮かれた感じではなくて、なんて言うか...嫌な感じなの」
深刻な顔して言うから、思わず周りを見渡すけど何も感じない。
「...何も感じないよ?」
「矢作は鈍感っぽい」
失礼なことをさらっと田中に言われてしまった。なので、俺は意地悪に田中に向かって言う。
「田中かもよ?その熱視線送られてるの!」
「俺は大丈夫!そんな視線送られるほど充実した日々を過ごしてない!」
変に言い切った田中に凛と2人で爆笑した。
何気に田中も人気者なんだけどな。
「凛!!練習再開すっぞー!」
遠くで山根が凛に向かって手招きしている。
「はーい!今 行く!じゃあね、優羽と田中!練習頑張ってね」
にこやかに手を振って行く凛に俺と田中も手を振り返す。
「ってか、玉入れの練習終わったよね」
「うむ。応援するか!!」
先ほどの玉入れの練習並に気合を入れた田中が鼻息荒くリレーチームに近づいて行く。
「あ!矢作。今、1年がお前探してたぞ」
不意にクラスメイトに声をかけられ歩みが止まる。
「1年?俺に?」
「うん。教室で待ってるって」
じゃあ、とクラスメイトはそそくさと立ち去った。
1年に知り合いなんてほとんどいない。探されている意図が分からず首を傾げるが、もしかしたら松木君かな?と浮かれた俺は考えた。
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