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彼の幼馴染み。

今日は、学年での体育祭りの練習なので教室のある階は静かだった。 「...矢作先輩?」 確認するような声に振り向くと見知らぬ男性がこっちを見ていた。明るめの茶色い髪は無造作に整えられ、一重なのにキツさを感じさせない瞳が俺を見ている。髪色は明るいけど、和風な全体的にすっきりと整った顔立ちをしていた。 「...そう、だけど」 松木君ではもちろん無かった。 見たことも無い男に自分の名前を呼ばれるのも何となく落ち着かない。 俺が首を傾げているのを見て男は笑う。 「初めまして!俺、1年の太田千聖(ちひろ)って言います!よろしくお願いしますね!」 チャラそうな見た目に反して、男はハキハキと滑舌良く自己紹介をしながら近づいてきた。松木君程ではないけど、それでも俺よりかはだいぶ大きく見上げてしまう。 「あ~、えっと...?」 よろしくされる覚えがなくって困って見上げていると太田...君がにっこり笑う。 「俺、松木太一郎の友達なんです」 「...へ?」 にこにこ笑い、太田君は呆然とする俺の手を握って上下に勢いよく振り出した。 「え?え?」 「やー、聞いていたより可愛らしいなぁ」 ジロジロと上から下にと彼の目線が移動する。不躾な視線に、戸惑ってしまう。 ...松木君が、話した? 俺と付き合ってるって?...男同志なのに、大丈夫なんだろうか。 頭の中が「?」でいっぱいになる。 俺は男しかダメだからいいけど、松木君は...大丈夫だろうか。彼が俺にとっての山根や凛のような存在なんだろうか。 「そんな、不安そうな顔しなくても大丈夫ですよ」 ハッとして顔を上げると思ったよりも近くに彼の顔があった。 「俺、太一郎とは幼馴染みなんです。ジロジロ見てしまってすみません。...あいつが、夢中になったのって先輩が初めてだから つい好奇心に負けてしまって来ちゃいました」 一重の瞳が柔らかく、恥ずかしそうに笑った。

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