62 / 93
優しいお友達。
「体育祭の練習中でしたよね?先輩はなんの種目に出るんですか?」
「え?...あ、えっと、玉入れ」
「...あぁ!玉入れ楽しそうですよね!!」
太田君は考えてから、笑って答えた。
見た目はチャラいのに、気を配って話す太田君が笑顔で答えてくれて急に親近感が湧いてくる。
うん。いい人そうだ。
「...太田君は?」
自分だけなのもなんなので、質問を投げかけると太田君は嬉しそうに笑った。
「俺は太一郎と一緒です」
「じゃあ、運動できるんだね」
「や、太一郎ほどじゃないですよ。あいつ、ほんとに何でもできる嫌なヤツなんすよ」
その後、太田君は松木君がどれだけすごいのかとか、でも面白いやつで憎めないとか、小さい頃の話、をして帰っていった。
「先輩。何かあったら俺に声かけて下さいね」
「何かって?」
去り際にかけられた言葉。
「んーと。ほら、太一郎の事で、とか?気になる事とか」
幼馴染みなのでアドバイスとかできると思いますし、と笑った。
確かに。まだ、松木君についての情報量が少ない俺にはありがたい話だ。
最初の警戒が嘘のように太田君と親しく話せた事に俺は嬉しくて、笑って頷いた。
手を振り去っていく太田君が辺りを見回し、何かを見つけたように慌てて去っていくのをただ、友達でも見つけたのかな?くらいにしか考えていなかった。
...松木君のお友達と話してしまった。
浮かれた俺は1人、ニヤニヤしていた。
ともだちにシェアしよう!