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勇気をくれる。

背中にひんやりとした、冷たい感触。 「...先輩?」 首を傾げ、俺の顔を覗き込んでくる松木君。俺からの反応が無いので不思議そうな顔をしている。 あの手紙。 内容から、俺への性癖を指している。俺の事を知っている。見られている。いつ?松木君の存在も?...今も? 「せーんーぱーい?」 両手を顔の前で振っているが俺の反応が無いので、松木君の手がまた頬に触れようとしてくる。 「...わっ!」 思わず、ほんとに思わず、その手を振り払ってしまった。 「あ、」 「...!?」 驚きに目を見開き、こっちを見る松木君。俺は慌てて、振り払った手を見る。 自分だけなら、まだいい。もし、もしも松木君と一緒に居る所を見られたら?俺と同じような手紙が届いたら?松木君を傷つけられたら? 「ご、ごめん。ぼーっとしてたから驚いて。痛く、なかった?」 「俺こそすみません。驚かせちゃって。全然痛くないですよ。なんなら、もっとぶってもらっても」 「い、嫌だよ!」 「冗談ですよ」 するりと、さり気なく頬を触られた。体が強張るのを、優しく頬を撫でて宥めてくれる。 「俺、もっと先輩の事知りたいです」 「松木君」 「...頼りないけど、何でも話してくださいね」 へにゃりと笑う松木君に胸が締め付けられる。 「ん。...ありがとう」 机越しに、少しだけ松木君の肩に額をのせる。温もりが、嬉しい。 そっと、大きな松木君の手が頭を撫でてくれる。 ...ありがとう、松木君。 頼りないなんて、そんな事ない。ただ、これだけの事で俺はたくさんの勇気を貰ってるんだから。 「...松木君」 「ん?」 肩から顔を上げて松木君の顔をのぞき込む。 「ありがとう」 そのまま、松木君に口付けた。 「...んっ!」 瞬時に顔を赤くした松木君は、次の瞬間頭を撫でていた手で俺を閉じ込めて少し乱暴なキスをした。 「...どういたしまして」 そして、また へにゃりと笑うのだ。

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