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見たことあります。
「あ、...あの、」
沈黙を破ったのは、太田君。
俺は固まって動く事が出来ない。
「は、早いですね、今日」
あはは、と笑ってるけど、目が泳いでいるのが分かる。
「...それって」
自分の口から出たとは思えない掠れた声がでた。俺の指の先には白い封筒。太田君は慌てて体の後ろに隠した。
「あ、これは、その、」
「...今までの手紙、も、...太田君?」
やっと出た声は情けない事に震えていて、今にも涙が零れそうで唇を噛み締める。
ー嬉しかった。松木君の友達と仲良くなれた事が。同性の恋人なのに、笑顔で俺に会いに来てくれた。声をかけてくれた。仲良くしてくれた。...なのに。
「ち、違っ...!」
やっぱり、大切な幼馴染みが男の俺なんかと付き合うのは嫌だったんだろう。胸が痛くて、涙が溢れそうだ。泣きたくない。泣きたくないけど、頭がパンクしそうで何も考えられない。
「あっれー?優羽?」
不意に後ろから声をかけられた。
反射的に振り返ると、虹太兄ちゃんと須田さんがいた。
「...優羽?どうした?」
俺と太田君の嫌な雰囲気に気づいたのか眠そうだった虹太兄ちゃんの声が鋭くなる。見知った顔に、俺はホッとした。涙が零れなくて良かった。
「な、なんでもないよ。早いね、虹太兄ちゃんも須田さんも」
「ん。体育祭りの打ち合わせでね。」
眉間にしわ寄せて不機嫌な虹太兄ちゃんの肩を抑えて須田さんが答える。まるで落ち着け、と諭しているようで。そんな姿を見たくなくて、俺は笑顔で2人に近づいた。
「...優羽?」
「そこまで一緒行こうよ」
「...ってか、誰?こいつ」
不機嫌丸出しの虹太兄ちゃんの声。
「...」
太田君の顔が見れなくて俯く。
「優羽?」
「...後輩だよ。行こ」
「俺、知ってるよ。最近優羽と仲良くしてるよね?何回か見かけたよ」
須田さんが太田君の顔を覗き込みながら
「こう、ポニーテールの可愛い子とよく一緒にいるよ。ね?」
爽やかに笑って言った。
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