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パワーをもらっています。
「ま、松木君!」
「ふふ。擽ったがりですね、先輩。やっぱり可愛い」
いたずらっ子のようにニヤリと笑う松木君から逃げるべく耳を手でガードした。
「あ。そんな可愛い事をしちゃうんですね」
「だって俺、ほんとに耳ダメなんだもん」
チュッ。
耳を隠している手に口付けられる。
「へぇあ?」
驚いて変な声出ちゃった!
「ま、松木君?」
「はい?」
柔らかい感触を何度も手に感じて。わざと立てられる音が手を通して耳に響いてくる。
「何ですか?先輩」
そして、いつもより低い松木君の優しい声。...優しいけど、なんだか艶っぽくていやらしい声になっている。
背中がゾワゾワした。
はむっと親指の付け根を軽く食まれた。
「ふわぁっ!」
歯を立てられ驚いて、思わず手を耳から離してしまった。勢いで前方向に身体を動かして振り返ると、驚いて目を見開いている松木君。
「す、すみません!!先輩があまりにも可愛かったんで俺、夢中になってしまって...!」
などと、顔を赤くして言うのでこっちまで釣られて赤くなってしまった。
「も、もー!」
さっきとは違う恥ずかしさで思考停止になった俺は顔を両手で覆い、そのままバフンと松木君に上半身全部でもたれかかった。
「す、すみません!先輩、めちゃくちゃ可愛いんだもん」
「も、も、もぉー!」
恥ずかしくて、凭れた事で横座りになった俺は足をバタバタさせて身悶えた。
「いや、あー、うん」
ぎゅっとまた抱きしめられて、髪の毛に口付けられる。
「先輩が甘えてきてくれて、俺すごい嬉しい」
いつものように、くしゃっとした笑顔を向けているであろう松木君。
...ううん。俺の方こそいつも松木君の存在に助けられているんだよ。感謝してるんだよ。こうして、パワーをもらっているんだから。
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