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宙を舞います。

パシンッ。 武藤萌乃ちゃんの笑い声を消すように教室内に乾いた音が響いた。 「...え?」 太田君が、武藤萌乃ちゃんの頬を叩いた。泣きそうに表情を歪めて。 「...太田君」 「いい加減にしろ!!」 萌乃ちゃんは叩かれた頬を押さえ、太田君の大声に身体を竦ませた。 「太一郎が選んだんだ。お前がどうこう言える事でもない。人を傷つけるのはいけないことだ」 「...でも、あたし太一郎の事、ずっと好きなんだもん」 「好きだからって何をしても良いわけじゃない」 「~っ!!」 大きな瞳からボロボロと涙が溢れて、萌乃ちゃんは小さな子供のようにしゃくりあげながら泣き出した。 「萌乃。何度も言ったろ?太一郎は本気だし、二人の間にお前が入る隙間はないんだよ」 「...ひっく、で、でも!男、同士じゃな」 「それは、お前がどうこう言う事でもない。2人はちゃんと気持ちが通じあって付き合ってるんだよ」 叩いてごめん、と太田君は優しい声で武藤萌乃ちゃんの頭を撫でた。 「萌乃は太一郎にちゃんと気持ち伝えたんだろ?自分がダメだったからって、人を傷つけるのは間違いだよ。一緒に謝ろう。太一郎にも、先輩にも。な?幼馴染みとして俺が応援できるのは、こういう事だけだ」 萌乃ちゃんにかける言葉は優しくて柔らかい。 「...千聖っ、あたし、あたし」 「ん?」 武藤萌乃ちゃんは頭を何度も横に振り、太田君の手を振り払うと俺を睨みつけた。でも、その瞳はさっきまでの憎悪に溢れたものではなくて不安気に揺れていた。 「あたし...」 何か言いた気に、でも何も発さずに口を閉ざしてしまう。 「...分かんないっ!もっ...、嫌だっ!!」 武藤萌乃ちゃんは俺をドンッと突き飛ばした。華奢な女の子なのにどこにそんな力があるのか、俺が油断していた事もあって簡単に吹き飛ばされてしまった。 「...え?...ぅわっ!!」 派手な音を立てたのは、そこに使っていない机や椅子が乱雑に置かれていたからで。 「先輩っ!!」 俺はそこに突っ込んだ。

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