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習いましたっけ?
食後にボーッと歩いているとばったりと圭人と会ってしまった。
「よ。見たぞ、玉入れ。活躍してたじゃん」
友達と居た圭人はその人に先に行くよう伝えると当たり前のように俺の所へと歩いてきた。
「まぁ、ね」
俺はへにゃりと笑い、圭人に答える。
と、言っても特に活躍した覚えもないし、皆が一心不乱に投げきったおかげの勝利なんだけど。
「足、大丈夫なの?」
「うん。特に問題ないよ」
普通に話せてて、普通に笑えてる。
普通、の事が出来ていることが不思議な感じ。
でも、前ほどの違和感もない。
圭人からも、穏やかな空気を感じた。
気持ちの良い風が吹いた。
「...っつ!」
「ん?どうした?」
気持ちの良い風を感じた瞬間、目に違和感。
「んー、目にゴミ入った。痛い」
思わず擦ろうとする俺の手を、圭人は笑って掴んで止めた。
「おいおい、目を擦るな。余計酷くなる」
「痛い」
「目を閉じて、涙で流すんだって。習ったろ?」
習ったっけ?
言われた通りにすると、じんわりと涙が浮かんで頬を伝い落ちる。
「...どれ?目、開けてみな」
顔を上げてゆっくりと目を開けると、思ったより近くに圭人の顔があって驚いた。
「んー?取れたみた、いっ?!」
ガクンっと衝撃を受けて、圭人の身体が揺らぐ。近くにいた俺も衝撃を受けて身体が揺れた。
「何してんだっ!」
耳に入ってきた声は、ずっとずっと聞きたくて仕方なかった音。
「...は?」
そして、不機嫌な圭人の声。
「何してんだよ」
不機嫌な...松木君の声。
声のする方へ顔を向けると、久しぶりに近くで見た松木君が眉間に皺を寄せて見たことのないほどの怖い顔をして圭人を睨んでいた。その腕を掴んで。
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