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障害物リレーです。
「優羽お帰り!散歩長かったね」
クラスに戻るとお菓子を食べている凛がそれを1つ俺にくれながら出迎えてくれた。
「う、うん。ちょっとね」
「…ふーん?あ、午後の部始まるよ!障害物リレー!」
「あー、お兄さんでるんだっけ?」
山根が嫌そうに眉間にシワ寄せて、小指で耳をホジホジしながら呟いた。
「もぅ!謙ちゃんったら!そんな言い方して」
「へーへー」
わいわい騒ぐ2人の横に腰掛けてグラントに集まってる選手をぼんやり眺めた。
障害物リレーは楽しければなんでもアリなリレーで昼食後のダルい雰囲気を変えてくれる我が校体育祭り名物のひとつだ。1年生から3年生までごちゃ混ぜに始まる。そこには凛の兄の虹太兄ちゃんの姿もある。
パァンと気持ちの良い音がして一斉にスタート!余裕で1位の虹太兄ちゃんは置かれている紙を拾い、キョロキョロと辺りを見渡す。その間にも紙を拾った選手が大声で教師やら友達やらの名前を叫び出した。「初恋の人ー?!」と叫んでいる人もいた。
「何が書いてあるのかな?」
わくわく顔の凛が隣に座っている山根の肩をばしばし叩いているけど山根は興味無さそうに生返事していた。すると、話題の虹太兄ちゃんがすごい勢いでこっちに向かって来て、山根の前で止まった。あまりの迫力に固まっていると
「…ちょっと来い」
そう言って山根の腕を掴むと返事も聞かず走り出した。
「…はぁ?何すか、いきなり!ちょっ、」
「いいから着いてこい!てめぇ、抜かされたら承知しないからな!」
「え?え?謙ちゃん!?」
あっという間の出来事に凛も呆然としている。
そして、2人は遠目でも分かるくらいに険悪な雰囲気で、でも走りは速く、見事に1位を取った。実は気が合うのかもしれない。
「……え?何、あれ」
「さぁ?でも!1位だよ!すごいすごい!」
凛は手を叩いて喜んだ。プリンが着実に近づいているから。
『はい、おめでとうございます!1位、ですが!お題によっては失格の場合もありますからね!確認しますね~』
マイクを持った係の人が虹太兄ちゃんから紙を預かり目を通す。
『…え?いいの、これ?あ、大丈夫?うんうん。じゃあ、お題は「ムカつく後輩」でした!有名だから知ってる人も多いと思うけどこの2人犬猿の仲だからねー!合格!』
その言葉を聞いた瞬間、山根は虹太兄ちゃんに掴まれていた手を思いっきり振り払っていた。
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