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I fall in love:変な刑事②
――数日後、何故だか俺の高校の校長室にいるし……
「矢野君、今回はお手柄だったね! さあ、座りたまえ」
扉をノックして怖々と顔を覗かせた俺を、校長が手招きしながら誘導してくれた。気持ちはすっげぇ回れ右したいけど、当然逆らえるワケがない。仕方なく、校長の隣に腰掛ける。
「まぁ、そんなに硬くならなくてもいいよ。今日は、感謝状の受け渡しの打ち合わせだけだからさ」
この間同様に、ニコニコしながら目の前で喋る変な刑事。
「はぁ、そうですか」
俺としては、当たり障りのない返答をしたつもりだったのに。
「今日も相変わらず、ツンツンしてるんだね。ご機嫌、麗しくないのかな?」
どうしてコイツは、俺の神経をわざわざ逆なでするようなことしか、言わないんだろう。
――つぅか、キレさせたいのか!?
「ああ紹介が遅れたね、矢野君。こちらは捜査一課、第一特殊捜査三係の水野さん。本当は捜査三課の人が来る予定だったんだけど、お仕事の関係で来られなくなって、代理で来てもらっているんですよ」
「ついさっき、銀行強盗があってね。そっちに人手が流れちゃって、面識のある俺が代理で、学校に来たってワケ。俺は君にまた会えて、光栄なんだけど」
「特殊捜査って仕事、忙しくないんですね。わざわざお越しいただいて、申し訳ないです」
「いやいや、ちょうど仕事があって来たのもあるんだ。その件に関してさっきまで、校長先生とお話していたんだよ」
俺の嫌味をサラリと交わし、微笑みを浮かべながら、にこやかな対応を続ける。
「ツンには後日、校長室に来てもらって、三課のお偉いさんと校長先生の三人で、感謝状贈呈と記念撮影行います。署内から広報係が来ますので、ちょっと大がかりな撮影会になると思いますが、ヨロシクお願いします」
……どうしてさっきから、変な名前で俺を呼ぶんだよ。説明すんなら、名字でやればいいのに。イライラするな。
変な刑事は校長と俺を見ながら、爽やかに笑顔を振りまき、すっと立ちあがった。校長も立ち上がったので、それに倣う。
「こちらこそ、当日は宜しくお願いします。あと例の件も穏便に……」
「任せて下さい。とりあえず校内を見て回りたいので、ツンをお借りていいですか?」
何でそんなことを、やらなきゃならないんだよ。受験生の俺が大事な授業を抜け出して、わざわざ来てるんだっていうの!
「矢野君この後、用事ないよね。水野さんに詳しく、校内を案内してあげて下さい」
「……分かりました」
しょんぼりと肩を落とし、校長に一礼をしてから、来た道を戻るように案内し始めた。
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