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I fall in love:運命的な出逢い⑥
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ツンに校内を案内してもらった後、職員室へ寄って学校内の図面を、コピーしてもらった。
購買で手に入れたおにぎりとお茶を手に、中庭のベンチに座って、しげしげと図面を眺める。眺めているのだけれど、全然頭に入らない……
しかめっ面して食い入るように図面を見ていても、頭の中では先ほどのハプニングが、エンドレスにリピート状態。
ツンの体温が俺の身体の中に、侵食するように沁み込んできて、見る間に臨界点を突破した。
あの腕にもう一度ぎゅっとされたくて、さりげなぁく何度も転びかけた俺。バカな大人だと笑って下さい。だけどラッキーはもう二度、訪れなかったのだった。
(ツンは俺のこと、すっごい変な刑事だと思ってるんだろうなぁ)
スリッパで派手にスッ転んでから、憐みの目で俺を見るようになったし。最初の頃の、嫌悪した眼差しよりは幾分マシなのか!?
「向こうから抱きしめられない状況を考えると、次の手は俺からってことになるよね」
図面に書いてある、三年二組のツンがいる教室。職員室でコピーしている間に、さりげなくクラスを調べてしまった。
『水野、想ってるだけじゃ、気持ちは伝わらないんだよ』
ふいに思い出された、山上先輩の台詞。
大人で男の俺が高校生のツンに、想いを伝えていいのだろうか。想ってるだけじゃ伝わらないことは、痛いくらいに分かっているけど。
「気持ち悪いって思われるの、目に見えるだけに辛いなぁ……」
このヤマは、迷宮入りすると思われた。山上先輩のときとは違う、互いの立場や年齢。だけど――
「山上先輩とデカ長に鍛えられた、この精神力が尽きるまで、やっぱり諦めたくないっ!」
ペットボトルに入ったお茶を一気飲みして、気持ちをシャキンと引きしめた。
「気持ち悪がられても、変態って罵られても、とりあえず気持ちを伝えよう!」
中庭でひとり気合を入れた俺を、屋上からデカ長とツンが眺めていたなんて、まったく気がつかなかった。
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