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I fall in love:高鳴る気持ち④

***  木っ端みじんに粉砕された心を抱えつつ署に戻ると、デカ長がすっ飛んできて、俺の首根っこを掴み、鼻息荒くしながら小会議室へと連行した。 「水野っ! お前何、高校生に手を出してんだ。このバカっ!」 「ああ、あれね。お礼のチュウですよ。ほっぺにチュウだけだから、大丈夫ですって」  俺が笑いながら肩を竦めて言うと、呆れたデカ長は、グーで頭を殴った。 「バカかお前はっ。あのコはお前に気があるから、訴えるとかしないだろうけど、普通は先生に通報されても、おかしくない様なことなんだぞ」 「本気で殴りましたね。これ以上バカになったら、どうするんですかって。……あれ?」  殴られた頭を撫でながら、デカ長が言ったことを考えた。俺に気がある?  って言ったよね。 「どうして翼が、俺に気があるって思ったんですか? だってデカ長に面倒見れないって、しっかりと断ったでしょ?」 「口では断ってたが、あの顔を見たらなぁ……」  そう言って、意味深に俺の顔を見る。一体どんな顔してたんだよ、すっごく気になるなぁ。 「俺今日、翼に告って玉砕しましたから。変な心配しなくて、よくなりましたよデカ長」  口を尖らせて、渋々カミングアウトすると、やれやれという顔をして、俺の頭を優しくポンポンする。 「こんな変人に告白されたら、驚いて逃げ出すわな普通。すぐ傍に、お前さんのことを想ってる奴だっているのによぅ」  人生、上手くいかないもんだね。と付け加え、会議室から出て行こうとしたデカ長の背中を、ひしっと掴んだ。 「俺のことを想ってる奴って、一体誰?」 「失恋の痛手を、ソイツに癒してもらう気だろ? 鈍いお前さんには、絶対教えない」  いつも通り意地悪な顔して、俺の手を振り解き、颯爽と去って行った。 「そんなんじゃないやい。ただ、気になっただけなんだ……」  こんな変な俺のことを見てて想ってくれる人が、近くにいるんだ。それじゃあ仕事、もっと頑張らなきゃ。……って、いや―― 「……失恋で落ち込んだ俺を奮い立たせるために、デカ長が仕組んだ巧妙な技……のような気がする」  人の扱いに、すっごくたけた人なのだ。このくらいの嘘を、平気でつくだろう。 「一瞬でも舞い上がった自分が、すごく恥ずかしい……」   肩をガックリと落として、会議室を出る姿を、じっと見つめる視線があることに、まったく気がつかなかった。    レンズ越しの視線の先に、俺がいつも映っていたなんて――

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