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I fall in love:落としてみせる!⑥

***  数日後の日曜日、重い足取りで矢野宅に向かう俺。 「ふと油断すると、翼くんを俺にくださいって言ってしまう、自分がいそう……」  前日にいろいろ説得する言葉を考えたのだけれど、決定打に欠けるものばかりで、頭を悩ませている状態。ゆえに、頭が痛かったのだった。  瀟洒な高級住宅街の一角に、翼の家がドドーンとそびえ立っているだけでも気圧されるというのに、これから翼父と対面しなきゃならないのである。 「関さんじゃないけどホント、いばらの道を行ってるよね俺」  苦笑いしながらピンポンを押すと、直ぐに玄関の扉が開いた。 (もしかして待っていたかの対応、早っ!) 「うっ、おはよ翼」 「お、おぅ……」  俺はいつも通り笑顔で接すると、照れた様子で返事をする。ああ、この顔写メりたいなぁ――  そんなことを考えていたら、視線を感じたのでそこを見ると、後方に翼母を発見した。へぇ翼は、お母さん似なんだね。 「今日はわざわざお越しいただいて、すみません。さ、どうぞ」  翼母に招かれて、ゆっくりと中に入った。  玄関で靴を脱ぎ、リビングに続く廊下を普通に歩くと、袖をグイッと引っ張る翼。 「水野……顔がかなり、引きつってるぞ。大丈夫か?」 「大丈夫だって。心配性だな翼は」  笑いながら翼の頭を、ガシガシ撫でたのだけれど―― 「お前さ、大丈夫じゃないときに限って、ニコニコしてるの分かってるのか?」 「そうなの? 意識してなかった……」  きょとんとした俺に、プッと吹き出す。 「今日は頼むぜ。しっかり親父を説得してくれよな!」  バシンと俺の背中を強く叩き、気合いを入れてくれた。プレッシャーを感じるけど、翼がくれた気合いで気持ちがシャキンとなる。 「おうよ! 任せなさいっ!!」  キリリと顔を引き締めて言ったのに、途端に不安そうな顔をした。 「気合い入れ過ぎて変なこと、絶対に言うなよな……」  そして俺はリビングに入り、ダイニングテーブルの椅子に座ると、翼父がどこからともなくやってきた。  ビシッとした身なりと威圧感のある風貌に、ちょっとたじたじしそうになった。(何か、刑事採用試験の面接を思い出すなぁ)  でも胸を張って、背筋を伸ばしながら立ち上がり、 「はじめまして。警視庁捜査一課第一特殊捜査三係から参りました、水野と申します。今日はお時間を割いていただき、ありがとうございます」  しっかり自己紹介をして、ペコリと頭を下げる。

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