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I fall in love:落としてみせる!⑧
「水野さん……」
「はいっ!」
翼母に話しかけられ、ぴんと背筋を伸ばした。頭の中はわたわたと、大混乱真っ最中のままである。
「翼は今まで自分から何かをしたいって、言ったことがなかったコなんです。だから私たち、驚いてまして……」
「そうなんですか」
「大学を出てからでも、いいんじゃないかっていう話もしてましてね。だけど全然、聞いてくれないの」
言いながら切ない顔をして、じっと翼を見る。そんな視線を無視して、あさっての方を向く可愛げのない翼。
「自分も同じことを翼くんに言って説得したんですが、まったく聞く耳持たなくて……」
苦笑いしながら言うと翼は重ねていた手を、痛いくらい握りしめてくれた。
(あのさ、痛いの我慢するのは大変なんだよ――)
その手を迷うことなく、強い力で握り返してやった。
「でも優秀であれば時間は多少かかりますが、絶対上にあがれます。翼くんならきっと大丈夫です」
「何の根拠があって、そう言えるんだね?」
鋭い眼差しで、俺を射抜く翼父。翼の手の温度が、ちょっとだけ冷たくなる。
大丈夫、俺が何とかするから――
そしてもう片方の手を、優しく重ねてあげた。
「今まで培った刑事の勘です。だからお願いしますっ!」
一瞬だけ翼の手を両手で握り締め、そっと手離してから立ち上がり、深く頭を下げた。翼も同じように立ち上がり、しっかりと頭を下げる。
こんな俺のような若造が、刑事の勘を振りかざしても、信用ならないだろうけど。大好きな翼のためなら、何度だって頭を下げてあげる。
「あなた……」
翼母が翼父の肩を叩いた。翼父はしばし考え込み、やがて頭を縦に振った。
「口の悪い息子ですが、どうか面倒見てやって下さい」
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