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I fall in love:落としてみせる!⑨
***
「一時は、どうなることかと思ったぜ」
OKをもらって早速本屋に行き、参考書の類を買いあさった。過去問をする事は、悪い事ではないからと、俺の家にある参考書を取りに、一緒に自宅へ向かう。
「いやぁ、緊張しすぎてドキドキしちゃった」
帰り際に言われた、翼母からの一言が嬉しかった。
『何だか翼に、お兄さんができたみたい。またいらしてね?』
翼母となら、上手くやっていける気がする。お婿に入ったら、可愛がってくれそうだよなぁ。
「お兄ちゃんっ!」
「はいはい、俺は翼のお兄ちゃん」
そう言いながら声のする方へ振り返ると、変な顔をした妹の彩音が立っていた。
「ゲッ……どうして、ここにいるんだよ?」
「お兄ちゃんこそ鼻の下伸ばして、だらしない顔しないの。わざと、そっちのコを引きたてているんでしょ」
――さすが妹。俺の心情を、よく読みとってる。
「はじめまして、矢野と言います。お兄さんには、大変お世話になっています」
翼は礼儀正しく彩音に向かって、しっかりと頭を下げた。おいおい、俺といるときとは、態度がえらく違うんですけど。翼ってば女の子の前だと、紳士みたいだ。俺にもして欲しいなぁ。
「こちらこそ、はじめまして。貴方が兄のお世話してるんでしょ? ごめんね、手のかかる人だから」
「そうですね」
ちょっとちょっと、そこはちゃんと否定しようか……
「実家からミカンが届いたから、家のドアノブにかけて置いたわよ。たまには連絡、しなさいよね」
「分かったよ。今日中に連絡する」
俺がしぶしぶ言うと、満面の笑みで笑いかけ、
「今度、時間があったらデートしようね?」
さりげなく翼を誘ってから、慌てて踵を返す彩音。毎回慌ただしいヤツだ。
「未成年の男子高校生を、俺の前で堂々と誘うなっちゅうの! 逮捕してやるぞ」
――翼は俺のなんだからな。
苛立つように言った俺に、
「何だか水野の方が、年下みたいだった。しっかりした妹がいて、良かったんじゃね?」
はにかむ様に言って、俺を見上げる。そういう君も、しっかりしたコだよ――
そんな複雑な気持ちを抱えて、歩き出すしかない。もっとしっかりしないとなぁって思いながら……
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