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Sweet's Beast Whiteday④
俺が抗議したら、自分の体調管理が出来ない大人がよく言うよ。と窘められる始末……。
「散々心配かけさせておいて、いざ会ったらパジャマ姿で抱きつき、潤んだ目で俺を見るお前に、どんだけ俺が我慢したと思ってんだ! しかもホワイトデーのお返しがインフルエンザって、普通はあり得ないだろ。バカ水野!」
「いやいや。翼は優秀な外科医役だから、きっと大丈夫だよ、うん」
怒りまくる翼を宥めるべく告げてみせたら、ヒクッと顔を激しく引きつらせた。
「……お前の話、さっぱり理解出来ないんだけど」
「俺が翼の高校でケガをしたとき、保健室で治療してくれただろ。そのときに、ちょこっとだけ妄想したんだよね」
「ちょこっとの妄想……俺が、優秀な外科医役なのかよ?」
「そうそう、研修医だけどね。まさか、今回も治療されるとはラッキーだなぁ」
俺はおでこに貼られた冷却シートを、嬉しそうに指を差した。
「お前が変なヤツだと分かってはいたが、ここまでくると言葉にならねぇ……」
「そんな俺のことが、好きなんでしょ?」
「認めたくないが、好きだろうな」
苦笑いしながら俺の体を、ぎゅっと抱き締める。伝わってくる翼の温もりに、じーんと幸せを感じた。
「マサに一番最初に、知らせたかったことがあるんだ。俺の配属先について……。関さんがメールで、こっそり教えてくれてさ」
「へえ、どこになったの?」
翼の顔を見上げると、クスッと笑いながら、
「せせらぎ公園前派出所勤務になりました。初めてのことで不安がたくさんありますので、色々ご指導下さい水野先輩」
更に俺を、強く抱き締める。
そこって、元職場じゃないか! うわぁ運命を感じちゃうなぁ。
――しかも、水野先輩って。
3係には後輩が入ってこず、いつまでたっても下っ端のままだったので、先輩という呼び名がえらく新鮮だったりした。
「翼が派出所勤務。俺、無駄に見に行っちゃうかも」
制服をビシッと着て敬礼してる翼は、絶対格好いいに違いない!
「ただでさえ関さんに目をつけられてるというのに、怖いもの知らずだな。デカ長さんにも叱られるぞ?」
「非番の日に、公園からウォッチングするのもいいなぁ。キビキビ仕事をこなす、矢野巡査の1日……」
「それって、ほとんどストーカーだろ。職質かけて逮捕する!」
翼は呆れ果て俺のほっぺを、グイグイつねってきた。
「いらいじゃないか、やえろよぅ」(痛いじゃないか、やめろよ)
「二人きりのときだけは、妄想とか変な行為に渋々目を瞑ってやるから、外では自重しろよ。恥ずかしすぎるから……」
「大丈夫だよ、俺みたいなの好きになるのは、翼くらいしかいないって」
「お前って鈍感だから、好かれててもスルーしそうだよな。ある意味、罪作りな男」
「何か、らしくないね。どうしたの翼?」
やけに絡んでくる印象。ツンと澄ました顔が、それを物語っている。
「マサが音信不通にするからだろ。てっきり俺は捨てられたのかと、いろいろ考えたんだぞ」
「だって、心配かけちゃいけないかなって思ったし、インフルエンザうつしても悪いし、ね……」
「俺、実際はマメじゃないんだ。今までは、相手がマメだったからなんだけどさ。お前がそんなんだから、マメにならざるおえないんだからな」
眉間にシワを寄せて、延々と苦情を言う。翼の言う通り、俺は罪作りな男かもしれないな。
「これからはちゃんと、連絡するように努力します。……ごめんね?」
上目遣いをして翼を見ると、先ほどの澄まし顔を少し解いて、しょうがないなぁという表情になった。
「反省するなら、早いトコ風邪を治せよ。エロくて元気な政隆を、俺としては抱きたいんだから」
「うん。頑張って早く治す。翼が看病してくれるから、きっとすぐに良くなるよ」
ニッコリ微笑むと同じように微笑んで、また唇を合わせてきた。勿論俺は、腕を突っぱねて抵抗する。
「大丈夫。俺、予防接種してるし」
「でも」
「実感させて欲しいんだ。やっと、マサのところに帰ってきたんだって。ずっと会いたかったから……」
そんな嬉しいことを言われたら、抵抗なんて出来ない。
さっきつねったほっぺを、今度は優しく撫でてくれた。そんな翼の手の温もりを感じながら、そっと目を閉じる。
「おいおい、物欲しそうな顔するな。止まらなくなるだろ……」
「やっちゃってもいいよ?」
翼に抱きついてキスをしたらグイッと下顎を掴まれ、斜め45度の向きにグギッと捻られた。その瞬間、いい感じで首が鳴ったよ(涙)
「何すんだ、痛いなぁ」
「さっきから言ってるだろ、煽るようなことすんなよ。悔しかったら、早く風邪を治すんだな」
「分かった。変なところに、頑固なんだから……もう」
俺はしぶしぶ諦めて、翼が作ってくれたおじやをパクパク食べ始めた。
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