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水野刑事恋の捕り物劇番外編:ブレない気持ち

 本日は2月14日、春のような陽気に誘われ、アクビを噛み殺した公園前派出所。目の前に広がる和やかな風景に、安堵のため息をついた。  この時期、暖かくなると物騒な事件が勃発しやすい。立てこもりだの、刃物を振り回すだの、露出狂が出没だのと、警察官は休む暇がないくらいだ。  だが俺の目の前にはひたすら平和な日常が繰り広げられ、当たり前の幸せを噛み締めずにはいられない。 「昨日はマサの奴、非番だったクセに半日そこで、張り込みという名のストーカーしていたよな」  疑われるようなことをしてるつもりはないのだが、暇があれば恋人の水野は、俺の周りを何かとうろちょろしてくれる。挙げ句の果てには道を尋ねたおばあちゃんや、お金を拾ってくれた小学生に対して嫉妬してくれたりと、ムダに忙しそうにしていた。 「ちゃんと好きだと、言ってやってるのにな。どうすりゃいいんだか」  死んだ山上の本質が似てる俺を、好きになってくれた水野。  ――もし似ていなかったら、きっと好かれなかっただろう。  そんな風に、不安に苛まれるときがあるけど。俺は水野のことが好きだという事実や、揺るぎない想いが、自分のことをきちんと奮い立たせていた。  そんな俺の想いを受け止めて、アイツは愛してくれるから、これ以上の贅沢は望まないと決めたのだが出来ることなら、今すぐにでも捜査一課の刑事になって傍にいてやり、守ってやりたい希望を胸に秘めている。これは熱望といってもいい!! 「先ずは、今の仕事を完璧にこなせるような、警察官にならないとな」  今日勤務が終わったら、マサの家に行って帰りを待つとしよう。事件が起こらなきゃ、一緒に食事くらいは出来るかな。  ついでに不三家のハートチョコを渡せば、喜ぶこと間違いなし! 昨年と同じ物だけど、違う物をあげて外すよりいいか。  そんなことを考えながら、晴れ渡る青空を見上げた。  今日は珍しく、電話もメールもない。そんなあからさまな態度をとって、俺の気を惹こうなんて、馬鹿げているよな実際。 「そういう可愛いトコ、好きだったんだろうな山上」  そんな水野のことが、同じように好きだから――ブレない気持ちが、俺自身を強くしてくれる。だからこの気持ちを大切に、マサに伝えていこうと思った。  ――チョコと一緒に、伝える気持ち。 『誰よりも、マサを愛しています』  ~fin~

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