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#1-3

小学校、中学校と、クラスが離れることはあれど、思春期に突入しても関係は途切れることなく、何だかんだで同じ高校へ進学。腐れ縁と呼んで差し支えない。 高校からの友人は皆、三人が幼馴染であることを知ると「ようやく合点がいった」という反応をした。 あまりにも毛色の違う三人が、行動を共にしていることが不思議だったのだ。 宗介は、すらりとした痩身に、癖のない真っ直ぐな黒髪。切れ長の目は鋭く、シャープな輪郭に薄い唇。 愛想こそないが、黙っていれば十人中九人が整っていると評するであろう容姿をしていた。 街を歩けば振り向く人間も多く、見知らぬ相手に連絡先を渡されたことも数回あった。 ただし口を開いたが最後、彼の周りに寄ってくるのは、バチバチの厳ついヤンキーだけになる。 とにかく口が悪い。ガラが悪い。性格も決して良くない。 本人はとくべつ不良ではないが、負けず嫌いと沸点の低さが災いして、売られた喧嘩を買わずにいられない。 なまじ生まれ持った運動神経が良いだけに、そこそこ強い。うっかり病院送りにしてしまう。 善良な同級生たちからは遠巻きにされるのも致し方なく、宗介自身も他人と関わるのを面倒がる性分だ。 那緒と友春がいなければ完全に一匹狼となっていたことは明白であった。 それに対し友春は、飄々とした雰囲気はあるものの、社交的で波風立てるのが嫌いなタイプ。 少し長めの前髪と、年中装着しているマスク。「気管支が弱くて」等と宣っているが、生まれてから何の病気もしたことのない健康体。 趣味は音楽鑑賞で、趣味の合う仲間と盛り上がることもあるが、基本的に誰とでも当たり障りなく付き合えるスキルの持ち主である。表面上は。 実際のところ、その性根は宗介以上に捩くれており(少なくとも那緒はそう思っている)、距離が近くなればなるほど、笑顔の裏に本性が垣間見える。 皮肉っぽくて攻撃的。 その毒舌は、那緒はおろか宗介までも膝をつかせる殺傷能力を誇る。 幼馴染ともなれば外面を繕うことすらしないので、時に言葉のナイフがざっくりと彼らの心を深く抉った。 そして那緒。 自他共に認める鈍臭さを誇る彼は、いつもどこか不安そうな顔をしている。 いかにもいじめられっ子然とした佇まいだが、これまでの生涯でそういった深刻な被害をほとんど受けずに済んできたのは、偏に宗介という虎の威を借りてきたためと言える(その代償として宗介になじられる日々を送っているとも)。 勉強もスポーツも鳴かず飛ばず。 唯一、足の速さだけが取り柄。 しかし日常動作はトロい。抜けていると表現したほうが的確かもしれない。 歩けば転び、電柱にぶつかり、絶対に入るなと言われた場所に入る、絶対に落ちるなと言われた溝に落ちる。 死なずにいるだけましで、その幸運だけでアルファの才能の取り分を使い果たしてしまったのかも知れない。 那緒と友春は、学校ではそれぞれ別のグループに属していて、共通ではない友人も多い。宗介に関してはそもそも友人と呼べる同級生がいない。 四六時中一緒にいるわけではないが、こうして年始を過ごしたり、休日に那緒の自室で延々と漫画を読んだり、帰るのが億劫になってそのまま泊まったり、そういう距離感があった。 以前、那緒が「ほとんど兄弟みたいなもんだよね」と口にした際は、「は? キモい」と珍しく綺麗なユニゾンが聞けたが。

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