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第2話

「ああ、こんな時間…森村くんもう帰っちゃっただろうな」 店の片付けと仕込みをしていたらこんな時間になっていた。犬みたいに懐いてくる森村を可愛いと思う。でも彼は最近、俺との距離感を勘違いし始めている。 俺はそれを拒めないでいる…… そんなことを考えていたら、こんな時間になったが正解かな…… 「あれ? 森村くんからメッセージ……」 スマホの画面に触れて確認した。俺は、急いで店の施錠を確認して自宅に走った。 俺は、マンションの階段を駆け上がり自宅前に人の姿が見えた。そこまで走って声を掛けた。 「……森村…くん」 「ああ……遊木さん」 「……なんで店に来なかった?」 「俺がいたら仕事出来ないでしょう」 「だからって外で待つなんて」 「いいんだって、俺がそうしたかったから」 俺は自宅の鍵を開けて森村を入るように言った。扉が閉まると森村が後ろから抱きしめた。彼から伝わる体が冷えて冷たい。 「森村くん…どれだけ外で待ってた?」 「……あったかい」 「ああ、…暖かい飲み物作るよ」 俺は森村から離れようと腕を掴んだ。その腕が強く引き寄せる。 「森村…くん」 後ろを振り向いた俺の唇に彼の冷たい唇が重なる。 「……冗…談は止めなさい」 「……冗談じゃないよ。俺はずっとんんんっ!」 俺は慌てて彼の口を手で押さえ、緩んだ腕から離れた。 「……冗談だよね」 コクコクっと頷いた森村の口を塞いだ手をそっと退かした。 「遊木さん……」 「俺達…友達だろう」 「……はい」 「座ってコーヒー淹れるから」 「はい……」 森村は少ししょげていたが、暫くすると何もなかったように、お互いに話して酒飲んで森村がソファーで寝落ちしていた。いつものパターンだ。 「 ……本当、可愛いな」 栗色のカールした森村の髪を撫でた。森村は気持ち良さげに寝ている。俺は、彼に布団を掛けて自室に入った。 「遊木さん……」 森村は、遊木が触れた髪に指を通しその手を彼の感触が残る口許へ…その指で唇に触れた。 「遊木さん……俺……」

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