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第2話

俺が男に引き取られたのは、小学生の頃だった。 「己咲くんよかったね!お父さんとお母さんができるよ!」 「おとうさん…おかあさん?」 「そうだよ!!」 そう施設の先生に言われて凄く嬉しかったのを覚えてる。 俺は物心つく前に施設に預けられたので両親の素性も顔すら知らずに育った。 そんな俺を引き取りたいという話に俺は心が弾んだ。 「己咲くんお話があるんだけど…」 そう言って呼び出された部屋には優しそうな夫婦が座っていた。 先生の話ではこの人達が新しい家族になるのそうだ。 夫婦は高橋と名乗り何度も面接をするうちに、早く二人の家族になりたいと思うようになっていた。 「己咲くん!よかったね!」 「うん!」 学校が夏休みに入る少し前に施設の先生に見送られ、施設を後にする。 車はどんどん施設から離れていって少し寂しい気がしたが、新しい生活に俺は少しの不安と期待に胸を弾ませていた。 「この家が新しいおうちだよ」 車がとある住宅の前で停車する。 名札にきちんと“高橋”の文字があることに今更ながらに感動していると、新しくお父さんになる人は先に車から降りて家のインターフォンを押している。 家族は二人だけではないのかも知れないと、俺はドキドキしながら車からおりた。 新しくお母さんになる人は車から降りる気もないのか煙草に火をつけだした。 その時点で不思議には思っていたのだが、その時の俺は嬉しさの方が大きくすぐに車を降りた。 ガチャッ 「はーい」 家から出てきたのは、小肥りで上下スウェット姿のだらしのない印象の男だった。 俺は不思議そうにその男を見ていたら、その男は俺を見おろし目があったかと思うと黄色い歯を見せてニヤリと笑った。 「お待たせしました。ご注文の商品です」 お父さんになる筈の人が男にそう言うと俺を前に押し出す。 ドアの隙間から見える家の中はゴミが散乱していて汚いなぁと単純に思った。 「どうも。料金は指定の口座に…」 「ご利用ありがとうございます。それでは次回は面接の時に」 俺は訳も分からず男に差し出され、お父さんになる人はさっさと俺から離れて車に戻っていく。 「え?ちょっと!」 「おっと…どこ行くのかな?」 「えっ?」 意味がわからなくて引き留めようと後ろを向いたところで、俺は腕を掴まれる。 そうこうしている間に車は軽やかなエンジン音を立てて走り去ってしまった。 「あ…」 走り去っていく車を眺めながら俺はどうしようもない絶望感に包まれていた。 新しく両親ができると思っていたら、訳の分からない男の元に置き去りにされたのだ。 「さぁ…行こうか」 「・・・」 俺が呆然としているのも気にしていないようで男に手を引かれ家の中に引きずり込まれた。 ガサガサ ゴミを掻き分けながら家の中に進み、とある部屋についた。 その部屋には病院の診察台の様なベットが置かれ、窓は板のような物で塞がれている。 壁には沢山の子供の写真が貼ってあり、顔には黒いバツ印がついている。 その異様な雰囲気に怖じ気づいて少し後ずさるがすぐに扉に背中が当たる。 掴まれている腕に力が籠められ痛くて仕方がない。 「色々面倒だったけどこれは当たりかな。今までの子達とタイプは違うけど…」 「うわ!な、なに??」 男が俺を抱き上げて身体をまさぐり始める。 俺は気持ち悪さから身体をよじるが、男の手は止まないし際どい場所を撫でていく。 「離して!離せよ!!」 「うーん。やっぱり気の強い子はいいなぁ」 「がっ!!」 俺が暴れると、首に手が伸びてきてぎゅうっと力が入る。 痛いのと、苦しいので一気に恐怖心が沸き上がった。 「元気な子を見てると…壊したくなるよ。さぁおじさんとあ・そ・ぼ・う」 「うぐっ…」 「おっといけない。折角苦労して手に入れたペットを殺しそうになっちゃった」 ドサッ 「ゲホッゲホッ」 首から手を離されるとそのまま床に落ちる。 俺は苦しさから咳き込む。 「ひっ!!」 男の近付いてくる足音に急いで立ち上がり部屋の奥へと逃げる。 しかし、そこまで広くない部屋の中では逃げることは不可能だ。 直ぐに部屋の隅に追い込まれ腕を掴まれた。 1度は男の腕を振り払ったが、直ぐにもう一度腕を取られる。 「そうそう。頑張って暴れておじさんを楽しませてよ」 「やだ…さわるな!」 俺の抵抗も虚しく男に捕まえられた。 何とか逃げ出して施設に帰ろうと足を振り上げるが、足は空を切るだけで男に当たりもしない。 「あがっ!」 「少し大人しくしろ」 「にゃんらこえ!はゆせ!」 口に何か入れられて口が閉じられないようにされる。 俺は暴れるが、男に敵う筈もなく診察台の様なベットに寝かせられる。 頭だけベットから出た状態で寝かせられたので、頭に血が昇らないように首に力を入れて頭が下がらない様にする。 「ふぅ。遊んでたらおじさん興奮してきちゃった…」 「なんれひんひんらすんらよ」 男がおもむろにスウェットのズボンを下ろすと、汚い性器が出てくる。 色は俺と違い赤黒く、血管が浮き出していた。 男の臭いに吐き気がするのに、いつの間にか腕を縛られ身動きが取れなくされている。 「くひゃい…ひかずけるな…」 スウェットを近くに放り投げると、男が更に近付いてくる。 「口の処女いただにまーす」 「やら!やへて!んぐっ」 男のモノが口に差し込まれると、独特の臭いと喉の奥に感じる異物に吐き気が込み上げてきた。 しかも仰向けで首を反らした体勢に胃の中の物が逆流してくる。 鼻に酸っぱい独特の臭いがするが、俺が吐き出さないように首を持ち上げられ頭を少し高くされる。 「んげっ、げっ、ゲェ」 「舌がビクビクしてきたな…意識飛ばすなよ」 男が自分勝手に動き、顔に玉や陰毛が当たる。 しかし、苦しさから白目を剥いてきた頃喉の奥に熱い何かを出されたのを感じた。 「おげっ」 口から男のモノを引き抜かれると、関を切った様に胃の中の物を吐き出して床に吐き出す。 少し顔にかかったがもうそんなこと気にしても居られない。 苦しくて苦しくて息を吸うのが精一杯だ。 「久々だからいっぱいでちゃった」 「ゲホッ、えぐっ」 放心状態で首に力が入らず頭を垂らした状態で男の事をぼんやり見ていると、まだまだ男の興奮は収まりきらない様子だ。 俺はただ、新しい家族が欲しかっただけなのに何が起こったんだろう。 こんな事なら施設に居た方が全然ましだったとぼんやりと思った。 これが俺の地獄の夏休みの開幕だった。

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