21 / 52
第21話
男と一緒にとある部屋の前についた。
建物は外見は純和風といった雰囲気だったが実際の内装は和洋折衷で、今目の前にあるのは木製の扉で装飾が施されている。
コンコン
男が扉をノックするが、男は中からの返事を待たずに扉を開けた。
「あら。来てくれたのね…待ってたのよぉ」
部屋には黒髪の老女が立派な書斎机に座っており、俺と男を一瞥すると手元の書類らしき紙に視線を落とした。
判子をその書類に押すと、紙をトントンと揃えて机の端に寄せる。
すぐに椅子から立ち上がると、その老女は男に駆け寄ってきた。
「お隣の部屋にお菓子がおいてあるから、あなたはそれを食べて待っててね。私はその子にお話があるから」
「わかった」
まるで恋人か、小さな子供に話しかけるように甘えた声で老女が男に話しかける。
俺は男の後ろに半分隠れるように立っていたのに、老女は男を別の部屋へ行かせて俺に何やら話があるようだった。
男が俺の首輪からリードを外してくるくると手に巻き付けたかと思うと、部屋を出ていってしまった。
突然後ろ楯を無くした俺は、オロオロと視線をさ迷わせる。
「まだ生きていたのね…」
「えっ?」
先程とは違うトーンで放たれた老女の思いがけない一言に、俺はパッと顔を上げる。
俺の目に飛び込んできたのは、俺が今までで見たことが無いような何か汚物でも見るような嫌悪感や恐怖心の混じった目をした老女の顔だった。
「女は妊娠して面倒だから男にしなさいって言った手前、都合のいい肉人形を手に入れたまでは良かったのに。なんであの子は未だに“コレ”を生かしておくのかしら?」
俺を目の前に何かを捲し立てる様に話す老女の言葉が理解できなくて、俺はただ困った様にたちつくすしかない。
しかも、老女は俺の出生や素性等を知っているような口振りだ。
「本当に汚ならしい。あの子がすぐに壊して、泣きついてくると思ったのに何でまだしぶとく生きてるのかしら。さっさとあの子の家から出ていきなさい。少し遅くなってしまったけれど、次の養子は女にして子供でも生ませるわ」
俺は何も言えずにただ黙って立っていることしかできない。
老女の話を要約すると、俺は男が直ぐに前の子供達みたいに壊してしまうと思っていたらしい。
しかし、老女の予想に反して俺は壊れずに男と一緒に居るのでさっさと家を出ていけと言うことの様だ。
老女の言葉に俺の中で何かがプツンと切れるのを感じる。
「肉欲に溺れる畜生以下の存在なのは、親も子もかわらないのね。私から大切な息子を奪っておいて一緒に死んだ身勝手な淫売だし、それの子供は私の可愛い末息子をたぶらかした淫乱だなんて」
「・・・・」
「あの子も小さな子供に悪戯をして困っていた時期だったから淫売女に子供を差し出せと言ったら、拒否してきた癖に結局は大事な跡取りの息子と事故で死んだのよね。本当にあの淫売女だけ死ねばよかったのに。あの女と息子の子供は引き取らずにわざわざ施設に放り込んで、業者を挟んで養子縁組して末息子専用の肉人形を用意した。でも、それが間違いだったのかしら」
老女は一気に捲し立てるとその後、はぁと大きな溜め息をついた。
俺は何か言い返してやろうとも思ったが、老女の剣幕に言葉を発することさえできないでいた。
言われてみれば、俺は施設で暮らしはじめた時の記憶が全くない。
目の前に居る老婆から両親が事故で亡くなった事を聞いて、俺は心底ほっとした。
俺は不要だと思われて施設に預けられた訳ではないという事実が分かっただけでも、今の俺には救いだった。
老女の口振りからするに、目の前の老女は俺の祖母にあたり、俺を管理している男はおじにあたるらしい。
しかし、自分がこんな奴等と血縁関係があると思うだけで俺の背筋に冷たい物が走る。
「そろそろあの子も良い歳だし、何処かで孕み腹でも調達してこなきゃねぇ。元々の跡取りは淫売女のせいで居なくなってしまったし、未来の跡取りも必要よね」
老女は、俺の事などもう気にも留めずに机の方へ戻っていった。
何やらぶつぶつと良からぬ事を口走って居るが、俺はただ男が戻ってくるのを待っているしかない。
少しでも動くと何かまた言われるのではないかとひやひやする。
ガチャッ
老女が机の上の電話から受話器を持ち上げる。
「お話が終わったから、こちらに来てくれないかしらぁ」
老女の猫なで声で、すぐに男に電話をしたことが分かった。
先程の罵詈雑言が嘘の様な老女の態度に、俺は内心呆気に取られる。
なんとか顔に出さずに部屋の隅に立っていると男が戻ってきた。
「忙しいのに、ごめんなさいねぇ?」
「いや。大丈夫だよ」
「はい。今日わざわざおうちに来てくれたから、お小遣いね」
老女が男に何やらお小遣いと言って金を渡している。
男は禿げ上がった頭に脂肪のたっぷり乗った身体なのは、明らかにこの老女のせいなのでは無かろうかと目の前の金のやり取りを見て思った。
「次のおうちは気に入ってくれたかしら?」
「うん。風呂場が広くていいね」
「…っ!」
老女と男が話しているのをどこか遠くに感じていた俺はぼんやりと見ていたが、男が俺の横に立ち腰に手を回してきた。
手は俺の尻の肉をがっしりと掴み、アナルのバイブを掌で奥に押し込んでくる。
なんとか声に出すのは堪えたが、背筋がピンッと伸びた。
老女は俺が何をされているのか分かっている様子だったが、男に笑顔を向けている。
「その子とは仲良くしているの?」
「うん。言うことはなんでも聞くし、とっても良い子だよ。ただ、たまに悪戯してきたりするから困ってるんだ」
「あら、そうなの?なら、新しい子なんてどうかしら?あなたもいい歳になった事だし、可愛らしい子を産んでくれる子なんていいと思わない?」
老女が男に俺との様子を聞いているが、男はニヤニヤと笑いながら俺に回した尻の手を離さない。
小さなくちゅくちゅという水音が明らかに聞こえているだろうが、老女は表情を崩さなかった。
俺が口許を押さえ、なんとか声が漏れない様にしているのを老女は視線で射殺してくるのではないかと思うほど睨み付けてくる。
男は老女の話は半分ほど聞いていないのか適当に返事をしているのが分かった。
「んー。まだ良いかな」
「それは残念ねぇ」
老女は明らかにがっかりといった声を出すが、男は全くといって気にしていない。
俺はそれに密かに胸を撫で下ろした。
こんな異常な人間達の血など後世に残すべきではないし、何より男に捨てられれば俺は路頭に迷う事になる。
施設に戻ったところで施設に居られる時間も限られているし、退去させられる日は直ぐにきてしまう。
なかなか学校には通わせてもらっていないが、なんとか勉強は遅れない様に努力はしている。
高校にも通えるか現時点でも分からないが、男と引き離されてしまえば俺には更なる地獄が待っていることだろ。
もしかしたら目の前の老女に殺されてしまうかもしれないし、何より完全に男によって躾られた身体は男からは離れられない。
そう思った瞬間、俺の心にあった重りの様な呪縛が無くなった気がする。
「まぁいいわ。次の会議には出てね?」
「わかったよ」
老女は、一旦諦めたのか男にまた猫なで声でお願いと言っている。
男はこの家の事業を手伝っているのか仕方ないと頷いていた。
今居る家を見る限り、男と老女の仕事は上手くいっているようだ。
「じゃあ、母さん俺は帰るよ」
「また、いつでも来てちょうだいね。あぁ…あなたは来なくてもいいのよ?」
老女は、太って禿げた男に寂しそうに別れを告げている。
男が俺の首輪にリードを取り付けているのを見て、老女は満面の笑みのままで俺に告げてきた。
俺も二度とここには来たくないと感じていたが俺に決定権など無いので男次第である。
最後まで男の前では老女は表情を崩さなかったが、最後に男がドアの方へ振り返った瞬間に見せた俺への憎悪を俺は忘れることができない。
「あーあ。疲れた」
「あの…」
男がどすんと車の運転席に座った。
振動で車がぐわんぐわんと揺れる。
エンジンをかけながら大きく息を吐いたので俺は珍しく男に遠慮がちに声をかけた。
「己咲どうしたの?」
「あの、家まで…我慢できないので…」
「へぇ。今日はどうしたの?興奮しちゃった?それとも最後に押し込んだのが気持ち良かった?」
男が俺を嘲笑いながら、ギアを変える。
車を走らせながら嬉しそうに話しかけてきたので俺は表情を作りながら男の手に自分の手を重ねた。
「イッ、イクッ、イク!!」
「お外でしてるから人が来るかもしれないのに、おじさんにそんなに厭らしく足を絡めてきておちんぽおいしい?」
「やっ、お腹に!お腹にちょうだ…」
「積極的な己咲かわいいね」
機嫌の良くなった男は人気の少ない山道に車を停めると、俺にキスをしてきた。
俺は男とねっとりと舌を絡ませ合う。
男が俺の着てる制服を全て脱がせると、いつも家でさせられている首輪だけの姿になる。
助手席のシートを倒してフラットにすると、俺は尻を高く上げてバイブをひりだした。
バイブに着いている無数の突起に孔の縁を擦られて、男に許可なく制服の上着を濡らしてしまう。
俺はバイブの抜け落ちてぽっかり空いた孔の縁に指を掛けて男を誘うと、男は俺に覆い被さってきた。
元々フラットになっている後ろの座席に押し倒され、男が正面から挿入してくる。
男の体に足を絡ませ、逃がすまいとすると男は大いに喜んだ。
「種付けプレスでお腹にピュッピュッしてあげるね」
「おにゃか…ちょうら…」
男に押し潰される様に俺は絶頂を迎えた。
俺は絶対に男の側を離れないと、あの老女の言葉で誓った。
狂った一族の血を残せないと建前では思っているが、何より俺もここ数年一緒に暮らして男に惹かれている。
この男に見捨てられれば、大袈裟な話ではなく生きていけないだろう。
ここから俺は、男から離れない為に色々と計画を実行することにした。
ともだちにシェアしよう!