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第23話
「帰ろっか、亜樹」
僕は声を出さずに頷いた。
もう、この場所から離れたいよ?
「またね。亜樹」
「下の名前で呼ぶ子、居ないのにどうしてあの子だけ特別な子でしょ?」
下の名前で呼ぶ子がいない?
特別?
隣にいる子はなにを言っているんだろう?
「それ以上しゃべると帰るからな・・お前じゃなくても他にもいるんだよ」
「もうしゃべらないよ。だから、お願いしてよ」
「良い子にはしてやるよ」
吐き気がしてくる。
本当に家に帰りたいよ。
「ほらっ、亜樹。帰るから歩けるか?」
「せ、誠也」
「なんて顔してんだよ。帰るぞ亜樹」
誠也は笑うと僕を先輩側から遠ざけるようにして背中で隠してくれた。
2人の横を通り過ぎる時に先輩が何か言った気がした。
けれどそれはあの子に話していたのかもしれない。
聞き取れなかった。
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