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第92話
「亜樹」
名前を呼ばれて身体が強張った。
会いたくない人!
こんな状態を知られてしまったら僕はもう何を言われても拒めなくなってしまう。
今、一番会いたくない人の声だった。
「亜樹、1人で何してるんだ?彼はどうした?」
「あっ・・」
ゆっくりと僕の隣に座り顔を覗き込んできた。
相変わらず綺麗な顔立ちをしている。
「泣いていたのか?」
「ちがっ、目にゴミが・・入って・・」
優しく笑いかけて僕の頬に触れる手は前に乱暴な扱いをしていた人とは思えなかった。
けれど僕はこの人が怖い。
これが本心ではないんじゃないかと疑ってしまうのだ。
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