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not sweet… 7

ベッドに行きたいという俺の提案は再び却下されて、ローテーブルにうつ伏せの上半身を預けている。足は膝立で、膝の下には丁寧にクッションを敷かれて。わざわざそんな事をするくらいなら、ベッドに行った方が早いのに。 「は…ぁっ…はぁ…」 「少しほぐれてきたかな。痛くない?」 「ん…大丈夫…」 「ようやく指3本入ったよ」 「ゆ…わなくて、い…ッ」 紫音の指がわざとか偶然か、敏感な所を掠める。 「ッ…だ、め…そこばっか…っ」 何度もそこを刺激してくる所を見れば、意図的なのだろう。俺が一人喘がされる中、紫音は何も言わない。途端に不安になる。今、紫音はどんな顔をしているのだろうかと。 後ろから責められるのは、身体は幾らか楽だけど、顔が見えないからあまり好きではない。顔を見合わせていれば、紫音の優しい表情が見れたら、無言で責められても怖くはないのに。 怖いなんて……。 紫音に失礼だ。でも、泣きたくなるくらい不安なのだ。 「可愛いすぎ」 ぽつりと呟いた紫音の声は、甘く優しく、そして熱が籠っていた。いつもの声だ。いつもの、愛おしんでくれる声。 そして背中に身体が覆い被さってきて、暖かく心地よい重みを感じる。首筋に唇の濡れた感触を知覚してほっとする。 「もう、入れていい?」 「うん」 答えると、項に慈しむ様なキスが落とされて、重みがなくなる。 代わりに後孔に冷たいローションが垂らされて、すぐに熱い塊に圧迫される。 「やっぱ2ヶ月空いたらきついす、ね」 指で慣らしたとしても、大きさの違いは歴然で入り口を抉じ開けられる痛みに思わず息を詰めてしまう。 「ハル先輩、息吐いて。力抜いて」 そこの力の抜き方は心得ていた筈なのに、上手く出来ない。紫音の言うように詰めていた息を吐いてみたら、少しだけ楽になって、紫音のモノが一気に入ってきたのがわかった。 「はいった…?」 「まだ。でも、取り合えずこれで…」 「ぁっ…ん…」 紫音は奥まで入ってこずに、浅い所で抜き差しを始めた。一番敏感な所に当たっている訳ではないが、俺の身体は入り口も内壁も、どこもかしこも擦られらる事を快感と認識する。俺をそんな風にしたのが紫音ならよかったのに……。なんてそんな事今更考えてももうどうしようもないのだが。 「先っぽだけなのにすげー気持ちいい。すぐイっちゃいそ…」 「紫音…奥まで、きて…」 久々の相瀬なのだ。ちゃんと紫音を感じたいし、紫音にも俺の全部を感じて欲しい。 「そんな事言われたら、押さえ効かないよ?」 「だい、じょーぶ…だから。紫音が、欲しい、から…っ」 言った途端、ズンと奥を力強く穿たれて、いきなりの衝撃で痛みも感じたがそれ以上の快感も突き抜ける。 「春、好きだよ。大好き」 痛みを慰めるみたいに、背中に沢山のキスが降ってくる。 顔が見えなくても、その言葉と行動で安心できる。安心して、自分をさらけ出せる。 「んっ…俺も、好き…」 紫音の腰の律動に、痛みはすぐに薄れて、その代わりに増えたのは当然快感で。 さっき出したばかりなのに、もう限界が近い。 「紫音っ…俺、もう…」 「俺も、イきそ…」 一際奥深くを突かれて、溜まりに溜まっていた快感が一気に弾ける。同時に身体の奥に熱いものが注がれたのがわかる。 非生産的で、尚且つ背徳的な行為なのに、この瞬間は満たされた様な気持ちになる。 こんな気持ちになるのは、紫音だからだ。あの悪夢の日々を連想する隙もないくらい熱い熱い情熱と深く染み渡るような優しさと愛で包んでくれるから。そうじゃなきゃ、きっと俺は二度と人と肌を重ねることなんてしなかっただろう。いや、もしかしたら逆に誰とでも寝るような空虚な人間になっていたかもしれない。紫音だけが、俺を満たしてくれる。紫音だけが、俺の特別な存在なのだ。

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