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My dear… 10

デートと言う割にデートらしいことは何もせずに、しかも結局ハル先輩に希望を聞くこともなく、なんとなくハル先輩のマンションへと足が向かってしまった。 「ごめん、ちょっと散らかってる。昨日片付けようと思ってたんだけど、いつの間にか寝ちゃって」 約1ヶ月ぶりに足を踏み入れたハル先輩の部屋は、本人が言うようにやや雑然としていた。 唯一あるテーブルの上にはノートパソコンとプリンターが鎮座していて、授業で使うのか資料らしきプリントに埋められていた。床にも同様にプリントが散らばっていて、片付けようと一枚拾ってみると、それは化学の資料の様だった。疑問に思いながらも散らばったそれらのプリントを拾い集めた。 「ハル先輩の担当って英語じゃなかった?」 「うん、そう」 「これは?」 テーブルの上を片付けていたハル先輩には、俺の行動は見えていなかったのだろう。振り替えって俺の手に集められたプリントを見て「あぁ…」と言った。 「それは担任が使う資料」 「担任って?」 「俺の指導のせんせ」 「指導の先生って、パワハラ野郎?」 「うん」 「なんでそのパワハラ野郎が使う資料をハル先輩が用意しなきゃなんないんですか?」 「担任は色々忙しいらしくて。雑用も副担任の仕事なんだと」 「そういうもんなんですか?」 「そうなんじゃないか。紫音も新人だと色々やらされるだろ?」 「まあそりゃあそうですけど…」 でもだからって自分の専門分野の事まで人にさせるとか、おかしくないか? でも、それが教師の世界なのか…? 「それ、ちょうだい」 テーブルの上を整理し終えたらしいハル先輩が手を差し出した。持っていたプリントを渡すと、それを一纏めにして床の隅に置いた。忘れない内にと思ったのか、USBメモリをパソコンから取り外して鞄に仕舞う。 「ハル先輩家でも仕事してるんだ」 「学校でやってもいいんだけど、最近夜は寒いから」 「あんまり無理しないで下さいね」 「分かってる」 このこじんまりとした部屋にはソファはない。寒がりなハル先輩の為に俺が昔買ってきたラグの上に取り合えず座った。 台所に立っていたハル先輩が水の入ったグラスを持ってきて、隣に座り込んだ。 狭いとは言え、向かいに座ることも、斜めに座ることも出来るのに、わざわざ横に来てくれたのは、ハル先輩なりのお誘いなのかもしれない。 そう解釈して肩に手を回して引き寄せると、ハル先輩の身体は抵抗なく俺の肩にしなだれかかった。 その勢いのままハル先輩の身体をこちらに返して膝の上に座らせた。俺の足を跨いだハル先輩と向かい合う。その頬が少し赤くなっていて、最高に可愛い。 にっこり笑いかけると、その目は恥ずかしそうに逸らされた。 堪らず、赤くぷっくりとした唇に自分の唇を寄せる。 久々に味わう温かくて柔らかな感触は、それはそれは甘い蜜の味だった。 気が付けば夢中でそれを食んで、蜜を吸うように口の中の唾液も貪る。 その甘い蜜が身体に染み渡る程に、自分の中心に熱が籠る。ドクドクと脈打つ様にそこに血が送られているのが分かる。強い興奮に頭がクラクラする。 俺の勢いにのけ反る頭を支えて、柔らかい口腔の粘膜も舌で味わい尽くした。その体勢から入り込んでしまったであろう俺の唾液を、細い喉がコクリと動いて嚥下した。 「ハル先輩、俺の首に掴まってて」 キスに浮かされているハル先輩は、俺の言う通りに俺の首の後ろに両手を伸ばした。そのまま華奢なその身体を横抱きにして寝室へと向かい、ベッドに下ろす。 「紫音…俺、シャワー浴びてない」 頬を上気させて、こちらを見上げるハル先輩は、そんな事を言う割に余裕がなさそうだ。 キスだけで臨戦態勢になっている俺が言うのもなんだが、ハル先輩のそこももう大分苦しそうだ。 「俺は浴びて来たから、いいでしょ?」 「……紫音がいいなら…」 そんなの、いいに決まってる。こう言うと変態くさいが、俺はハル先輩の匂い立つ様な甘い芳香ごと全部抱きたい。フェロモンというやつだろうか。シャワーなんて浴びて、それを消してしまいたくない。 目の前の愛しい存在の色香に惑わされた様にハル先輩の服を剥ぎ取ると、ハル先輩も負けじと俺の服に手をかけた。ぎこちないその様子がなんとも可愛らしく、どこまでも劣情を煽られる。 お互い産まれたままの姿になって、すぐにでもかぶりつきたい所を制して向かい合って肌と肌を合わせて抱き締めた。 「ハル先輩寒そうだから、暖めてあげる」 「ん…」 全身に感じるしっとりとした少し冷たい肌に再び昂りは増して、自分の腹とハル先輩の腹に挟まれた腰が自然と動いてしまう。 「紫音。なんかこれ、恥ずかしい」 ハル先輩は言葉の通り真っ赤になっている。こんな事よりも過激な事をいつもしているのに、いつまで経っても初で純粋で、そういう所が俺の劣情を掻き立てる。 「こうしてると、ハル先輩のにも当たって気持ちいいでしょ?」 「や…っぱ、恥ずい…」 ああ、もう可愛い。気持ちいい。 これだけで昇りつめてしまいそう。 ハル先輩も、恥じらっている割には昂った先端からはトロトロの蜜を溢していて、息遣いもイヤらしい。目も潤んできた。無意識に快感を追っているのか、俺の動きに合わせる様に控えめに腰を振る様は、恥じらうその姿と対照的に酷く卑猥だ。 これ、互いの腹の間にローションでも垂らしたら凄く気持ちいいんじゃなかろうか。今度浴室で試してみようか。

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