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into the night 6

男に唇を奪われて、口内を舌で蹂躙される。紫音とは違う忙しない舌の動き。違う唾液の臭い。その全てを拒絶したいのに、抵抗できない。 キスの途中で手を掴まれて、相手の硬く反り勃ったモノの存在を知らされた。男の手は俺のモノを揉みしだいている。 「勃ってきたじゃん。気持ちいいんだろ?」 せめてもの抵抗で首を横に振る。全然気持ちよくなんかない。気持ち悪い。でも逃げられない。押し退けられない。まるで隷属することが刷り込まれているかの様に。 「こんなにしてる癖に、意地張るなって。ほら、またやらしいキス、しよ」 ちゅくちゅくと音が出る程激しくてしつこいキスに息が上がる。 俺の前を弄っていた男の手が、後ろに回った。 「ア…ッ」 ツプっとそこに指を入れられて、思わず声が漏れる。 「まだここ柔らかいね。さっきまで大きいの咥えてたんだから当然か。もう、入るよな」 男は性急だった。 指を引き抜くと、すぐに両足を抱えあげられた。 「や……あ、ひあぁッ」 メリメリと無情に男のそれが埋め込まれていくのに、何の抵抗もできない。ただ涙を流して呻くだけだ。 後ろの扱いを知らないらしい男は、慣らす暇もなくすぐに腰を使った。 「はっ…あ…ンン…ッ」 男の動きに合わせて身体が揺れる。 痛い。苦しい。気持ち悪い。 それなのに、この身体は快感を拾う。 汚い。俺はなんて汚いのだろう。 これは一体何度目の失望だろうか。 「ケツの穴って気持ちいいんだね。それが普通なの?それとも君が特別?」 「なあ前すごいビンビン。涎まで垂らして、すっげーエロい」 「ねえいつからこーゆー事してるの?すげー慣れてるよね。君のここ、もうすっかりケツマ○コだよ」 男の言葉が棘の様に心に突き刺さる。 もうやめて。 分かってるから。 自分がどうしようもない淫乱で、それしか価値のない人間だって事は、分かってるから。 「そう言えばさ、『しおん』って彼氏?」 ……え? 「さっき抱いた時、君俺の事そう呼んでたから」 紫音。その名前を聞いた途端、元より最低だった気分はどん底に落ちた。 ああ。俺は紫音以外とキスしないって決めたのに、キスどころか身体まで差し出している。これを紫音が知ったらどうなるだろう。どれだけ怒るのだろう。そして、怒りの余り、失望する事だろう。当然だ。この身体の持ち主の俺自身が自分に失望してるんだから。 「彼氏の事思い出したら泣けてきちゃった?いいね、そういうのすげー興奮するよ。『しおん』は君を俺に寝取られちゃったんだ。かわいそー」 「…おん、の…」 「ん?」 「紫音のことを、悪くいうな!」 「…へえ、そう。君、彼氏にゾッコンなんだ。…寝取り甲斐があるわ」 「ッ…アぅっ…」 まるで棍棒か何かでめちゃくちゃに抉られている様だ。 紫音はこんな風にしない。激しさの中にも優しさがあって、ちゃんと俺の身体を気遣ってくれてた。 「いいんだろ?ここが。ホラ、いっぱい突いてやんよ」 「ヒっ…ア…アアッ…」 痛くて気持ちよくて、この感覚をどう言っていいのかわからない。でも、ただただ苦しい。快感も痛みも、苦しい。それは、物理的な苦しみだけではない。 「なあ、俺の名前も呼んでよ。ゆうきって。俺のハジメテ捧げたってのに他の男の名前呼ばれて、ちょっとムカついてたんだよね」 「ァ…や…いや…だ…ッ」 「ほら、呼べよ。今君をよがらせてるのは誰?」 「やだ、ぁッ…よべないっ…」 「呼ばなきゃ動画消してやんねえよ?簡単だろ。ゆうきって言えばいいだけなんだから」 「……うき」 「聞こえねえ」 「…ゆうきっ!」 「どーせならもっと可愛く呼べよ。彼氏呼ぶ時みたいにさ」 あんまりだ。 紫音を呼ぶみたいに、こいつの名前を呼べる筈なんてないじゃないか。そんなのは無理だ。 「はは…。睨むなよ。ま、今日の所はいっか。これで覚えたろ?俺の名前」 覚えたくもない。動画さえ消して貰えれば、金輪際会うことはない相手だ。 「それにしてもまじ君のケツマ○コサイコーだね。さっきはゴムつけたけど、君お肌ツヤツヤでビョーキとかなさそうだし、今回ナマなんだよね。やっぱナマいいわ。気持ちいい。そろそろイッちゃうけど、中に出していいよな?」 「だめっ、イヤだッ!」 「いいじゃん、孕む訳でもあるまいし。出させてよ」 「やだっ…ア…ヒあぁッ」 再び最奥を激しく抉られて悲鳴をあげた。 「ここすげえよ、涎。ほら、好きなとこ突いてやるから、お前もイっちゃえよ」 男には俺の悲鳴が快楽の声に聞こえるのか、激しさを増して抉ってくる。 「ヒゃ…アァァアッ!」 苦しいのに痛いのに、その強い刺激が気持ちよくて、男に言われた通りに白濁を飛ばした。同時に身体の奥に熱い物が注がれているのに気付いたけど、逃げることも出来ない。入り口が絶頂で勝手に収縮して、男のモノの存在を、その形まで嫌と言う程感じさせられた。 「そんなキュウキュウ締められたら、また勃っちゃうんですけど?」 「…ッや、抜けよ!」 「仕方ねえなぁ」 男が出ていくと同時にドロッとした粘液がそこから垂れた。 俺はこの男と寝て、中出しまでされたのだ。 意識がなかったとか、そんな言い訳が通用しない状況で、特に抵抗もせず。 俺って何の為に生きてるんだろう。 誰かの性欲を満たすため。 その他に俺に価値ってあったっけ? ああ。紫音の為という理由ならあった。 あったけど、もう俺は必要とされないかもしれない。 いや、違う。 俺みたいなのが紫音の傍にいちゃだめなんだ。 汚くて、淫乱で、何の価値もない人間が、紫音から愛されてちゃいけないんだ。

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