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I like…? 5

「も…出すよ…!」 ゆうきが4度目の精を中に放った。 もう俺の身体も、尻の中もぐっちゃぐちゃのドロドロだ。 汚い。けど、汚されて安心してる俺自身はもっともっと汚い。 ゆうきのが抜かれると、そこにぽっかり穴が空いたみたいに心許なくなる。 「ハルのその目、目の毒だわ」 「…どういう意味?」 「もう出ないのに、また突っ込みたくなんの。でも、いくら俺が若くても立て続け5回は干からびるから、一回休憩。ハル先にシャワー浴びてきていいよ。ベトベトだろ?」 4回もヤられて、正直腰が立たない。でも、俺は沢山の精液にまみれていて、ベトベトで、本当に汚い。 壁伝いにフラフラ歩いて、途中でゆうきに支えて貰ったりもしながら浴室に入った。 頭からシャワーを浴びていると、熱いお湯とは反対に頭の中は冷えてきて、そうなったら突然凄く死にたくなってきた。 苦しい。 何で俺はこんなに汚れてるのにのうのうと生きているんだ。 「おかえりー…ってハル?もう服着んの?」 「帰る」 「何だよそれ。まだまだ物欲しそうな顔してたくせに」 「うるさい」 「うわー、また可愛くないハルんなった。さっきまであんなに可愛く腰振ってた癖に」 聞きたくない。思い出したくない。 無心で服を着込んだ。スーツのジャケットまでを羽織ると、その下からしわくちゃになったネクタイが出てきた。 まるで紫音の心までぐちゃぐちゃに踏みにじってしまったかの様な強い罪悪感を覚えた。もうとても、これを身に着ける事なんてできない。 「お前俺の名前登録してなかったろ」 黙りこくっていたゆうきが突然そう言って反射的に振り返ると、その手には見慣れた俺の…。 「また人の携帯勝手に…!」 「ハイハイ、返すから」 投げ寄越されたそれを確認すると、ただの数字の羅列だった筈の着信履歴が、『秋良柚季』という見慣れない名前に変わっていた。 「もう無視すんなよ。帰るなら送ってく」 「いい」 「駄目。送る」 「いいって言ってんだろ」 「じゃあ帰さねえ」 「何で帰るのにお前の許可がいるんだ」 「だってお前の身体、もう俺のじゃん」 「…は?」 「お前と俺は今んとこただのセフレだけど、それでも俺、お前が俺以外にヤられるの嫌なんだよね」 ただの穴に独占欲を出すなんて、全くもって意味不明だ。それに、俺がいつヤられに行くなんて言った? 「俺は家に帰るって言ってるんだけど」 「ハルにその気がなくても今なら100パー襲われるって。お前、今どんな顔してるか分かってる?」 分かってない。知らない。自分の顔なんて。知りたくもない。でも、淫乱なのが顔に出ているのだろう。身体の汚れはシャワーで落とせても、もう俺自身が凄く汚いから、隠しきれていないのだろう。 「ほら。そーいう顔されるとお前本当は全然可愛いげないのに、守りたくなっちまうじゃん。で、どーする?泊まる?帰る?」 「…帰る」 「じゃあ大人しく車乗れよ。変な奴に襲われんのは流石にヤだろ?」 この部屋を出て、タクシーを拾って家まで帰るだけ。その間にそんな事がある訳ない。 そう思ったけど、もう面倒で、また顔が淫乱だとか誘ってるだとか言われるのも嫌で、頷いた。 帰りに乗せられた車は黒いスポーツタイプの軽だった。 「あの外車、やたらデカイし街中は運転しずらい」と言い訳染みた事を言っていたが、柚季くらい若い男には、この国産のどこにでもある軽自動車の方が似合っていると思った。 「うわ…ハル金持ちか…」 実家マンションの前で柚季が驚嘆の声を上げた。 いかにも…なこのマンションは、俺も好きではない。尤も、ここが好きでない理由は他の要素が多くの比重を占めているが。 「助かった。ありがとう」 一応礼儀として言うと、柚季は固まった。が、車を降りようとした時、腕を取られた。 「お礼のちゅーして」 「い…」 一瞬「嫌だ」と言いそうになったのを慌てて引っ込めた。何故その一言が言えないのだろう。俺は何を恐れているのだろう。 考えている内に柚季の唇が唇を掠めた。 「ハルがしてくれねえから」 柚季は、何がそんなに楽しいのか子供みたいに笑ってる。 今度こそドアを開けて、振り返りもせずにマンションのエントランスを抜けた。 柚季の視線を感じない所に来て、膝から崩れ落ちそうなくらい力が抜けた。 こんなにも気を張っていて、こんなにも心が痛いのに、それでも俺は、また柚季に求められれば拒めないのだろう。 自分の行動が、考えが、自分でもよく分からない。 一つだけ分かるのは、自分を痛めつけたいのだろうという事。 汚して貰って安心して、どん底に落ちていく自分を眺めて満たされる。まるで自傷行為だ。異常だ。 でも、今よりももっと汚れたら、それが異常だって事も気にならなくなるのだろうか。 元の姿なんて、見る影もないくらい、もう思い出せないくらいにドロドロに汚れれば、もうこんなに辛くないのだろうか…。

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