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be violated 5

「なあハル、合鍵ちょーだい」 突然のその言葉に頭を上げると、ガムテープの塊を纏めて捨てに行っていた柚季の手には、テーブルの上に置きっぱなしになっていた部屋の鍵が握られていた。 「スペアあんだろ?これ貰っとくから」 柚季が指先で弄ぶこの部屋の鍵を見ていたら、無気力だった筈なのに沸々と怒りが沸き上がってきた。 レイプされて、紫音の言葉も聞かされて、それだけでもうこれ以上ないってくらい打ちひしがれているというのに、まだ追い討ちをかけるつもりか。俺を絶望のどん底に突き落としておいて、それでも尚踏みつけるのか。 一体どうしてそこまでの事をされなければならないのだろう。俺は柚季と自分の意思で寝た事もあるけれど、半分くらいは俺にとっては強姦だった。恨むなら、嫌がらせをするのなら、俺の方こそその理由があるのに。 「返せ」 「いーじゃん。なーハル、そこ床、冷たくない?風邪引くからベッド行く?」 「返せ!」 「連れてってやろーか?」 「返せよ!」 「お前が俺の事無視しないでいい子にしてたら返してやるよ」 「ふざけんな!」 「ふざけてねえけど?あ、床、俺のセーエキで汚れてる。にしても中出しされた後ってエロいよな。コーフンしちまう」 「触んなっ!」 迫ってきた柚季の腕を叩くバシッという音が大きく響いて、すぐに身体が固まった。また酷い事をされるのではとの思いが押し寄せたのだ。 怯んだ隙に腰を引き寄せられて、肩を抱かれた。 「ハルは俺のセフレだろ?縛られたくなかったら大人しくしてろ」 「ん…ッ」 そんなのセフレですらない。強迫されてるだけじゃないか。そう言おうとした唇を塞がれる。 こんな事して一体何が楽しいんだ。したくてしてる訳でもない事で、どうして俺はこんな思いをさせられなきゃいけないんだ。最低だ。もう嫌だ。こんなのは嫌。 「…っは、何でこんな事!頭おかしい!」 「本当だな。俺もビックリだぜ。キモい事してんのもよく分かってんよ」 「じゃあやめてくれよ!」 「やめれねえよ、今更。だって今やめたら、お前二度と俺と会わねえだろ。俺の事ずっと避け続けんだろ。もう後に引けねえんだよ。こんな事しても俺はお前が……」 「ンッ…」 また唇を塞がれて、口の中まで犯される。こんな事されてまた会いたいと思う人間なんかいるもんか。柚季に強い嫌悪を感じているのに、強引に口の中を掻き回される度に気力が抜けて、諦めるしかないんだという思いに支配されてしまう。 「ベッド行こ」 「……」 「ほら立てよ。次もここですんの?」 「もう、いやだ」 「しおらしくそんな事言われたってやめねー。お前甘やかすとすぐ逃げ出そうとするだろ。お前には、俺をこんな風にさせた責任取って貰う」 「や…っ」 柚季に股を開かれた。さっきみたいに暴れる気力なんて、残っていなかった。 されるがまま、マグロの状態で前戯も何もなくまた突っ込まれて好き勝手揺さぶられる。 悔しくて悔しくてまた勝手に涙が出て、それを舌で舐め取られた。 柚季は、今度は楽しそうだった。 きっとこいつは、俺が何で泣いてるかなんて理解していないだろう。いや、きっとそんな事には興味もないのだ。ただ、俺が抵抗せずに好きにさせている事実を喜んでいるだけだ。 「あー気持ちいい。もっとガンガン突きたいから、今度バックな。四つん這いになって」 柚季に身体をひっくり返され、腰を持ち上げられる。屈辱的だ。でも、柚季の楽しそうな顔が見えなくなった事に少しだけほっとした。自分の泣き顔だって、見られずに済む。 「やっぱ従順なハルはかわいー。今度は気持ちよくしてやるな」 「ん…っ、ンン…ッ」 「甘ったるい声出しやがって、このインラン。もっと啼け」 「や…、ああ、ア…ッ!」 「きもちーな。大好きなのハメて貰って、最高だろ?これからも楽しもーな」 「イっ…いやッ…」 「どーせお前はこれから逃れられねえよ。ハメられたら、嫌とか言いながら涎垂らして顔も蕩けさせて喜ぶんだから。お前はそういう人間だろ?とっとと紫音に愛想尽かされちまえ。その方が楽になるぞ」 そんな事知ってるけど、聞きたくない。 柚季の言葉はまるで暴力だ。いつも俺に絶望を与える。もう既に腕は突っ張っていられなかったから、その手で耳を塞いだ。もう侮蔑の言葉も、それが例え本当の事だとしても聞きたくなかった。

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