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be violated 7

丁度シャワーから上がった時、チャイムが鳴った。すぐにドンドンとドアの叩く音と、「ハル先輩」と呼ぶ声がした。そして、ドアノブを回す音も。柚季は律儀に鍵を閉めて行ったらしい。 スウェットを着て、肩にはバスタオルをかけたままの姿で鍵を回してノブに手をかけると凄い勢いでドアが開かれて、外開きのドアに引っ張られてドンと紫音の胸にぶつかった。 「ハル先輩、いた!!よかった…」 すぐにぎゅっと抱き締められた。ここは一応外なのに。紫音もそれが分かっているからか、直ぐに腕は緩んだ。 「大丈夫!?さっきの奴は!?」 肩を掴まれて揺さぶられる。よく見ると紫音は肩で息をしている。この寒い時期なのに、額にはうっすら汗までかいて。 ここに引っ越したこと伝えていなかったから、きっと実家に行って、ここの住所を聞き付けて駆け付けて来たんだ。俺の為に、こんなに慌てて。こんなに汚い俺なんかの為に…。 「帰ったよ」 「ハル先輩、あいつに…」 「セックスしてた」 「な、な、何言ってるんですか!?」 「汚いだろ?俺、ほんと汚い。あいつはセフレなんだ」 「ハル先輩、冗談やめてください」 「冗談じゃない。さっき俺が何してたか、電話で分かっただろ?冗談であんな真似できない」 「だから、あれは強引にヤられたんでしょ!?」 「違うよ。好きでしてただけ」 「ハル先輩、変な事言うのやめてください」 「本当の事だ」 「そんな訳ないでしょう!」 「そうなんだよ。俺はそういう人間なんだ」 「ハル先輩!」 「言っただろ。俺は紫音に相応しくないって。俺なんかの事想ってても、紫音にメリットひとつもないよ。だから、紫音は俺以外のいい人見つけた方がいい」 「ハル先輩!そんな事言わないでください!何かの間違いだ!」 「そういう事だから、俺を抱く気がないなら帰って。抱きたいならいつでも来ていいから」 「抱きたいとか、抱きたくないとか、そういうんでハル先輩と会ってる訳じゃないよ!」 「でも俺にはそれしか価値ないよ」 「そんな事ない!ハル先輩ちょっとおかしくなってる。昔のトラウマがそうさせてる!」 「俺はおかしいよ、ずっと。だから、紫音とやっていけないって言ってるんだ」 「おかしくないよ!今はおかしいけど、これまでずっとおかしくなんかなかった!」 「それはきっと演じてただけ。紫音に相応しい自分になれる様に必死に背伸びしてただけだよ。本当の俺は、こんなんだから」 「ハル先輩…」 「もう俺の事心配しなくていいから。こんなに慌てて、汗だくになってまで俺の事探したりする必要ないから」 「でも!俺はハル先輩が好きなんだ!」 「俺、紫音の事好きなのに、他の男と寝てるんだ。紫音はこんな人間、嫌だろ?」 最後に紫音の顔を真っ直ぐ見たら、紫音は顔を強張らせて口を引き結んでいた。その視線は下に向いていて、俺の顔は見ていない。 玄関のドアを引いたら、抵抗なくドアは閉まって、紫音の姿は見えなくなった。 わざと外にも聞こえる様に音を出して鍵を回した。 これでいい。 これでよかったんだ。 これで紫音は俺の事汚いって分かった筈だ。 初めからこうしていればよかったんだ。 軽蔑されたくないとか、嫌われたくないとか、そんなのは俺のエゴでしかない。 紫音が俺なんかを大切に想い続けてしまうのならもう嫌われるしかないのだから。 これで、よかったんだ……。

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