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The truth SIDE 春 2

約束の時間はあっという間にやってきた。絶対に車には乗りたくない。どうにかして、二人にならない所で話せる様にしたい。 校門の前に立っているとすぐにヘッドライトの光が近づいてきた。そして案の定それは覚えのある車だった。 目の前で止まった軽自動車の助手席側のウインドウが開いて、柚季の、顔だけ見れば爽やかな笑顔が覗いた。 「よ、ハル。今日はいいつけ守ってくれたんだ」 「お前があんな事言うからだろ」 「だってほら見ろよこれ。あいつ手加減なく殴りやがって。まだ腫れてんだけど」 柚季が顔をこちら側に向けて左の頬を指した。確かに腫れている。もしも今日撮影があったとしたなら、仕事にならなかった事だろう。 「でもまあ、俺もこないだはハルに酷いことしちまったから、マネージャーにはハルの為にちゃんと嘘ついてやったんだぜ?」 「嘘…?」 「そ。酔っぱらって知らない奴と喧嘩したーって。プロ意識がないとか何とか滅茶苦茶怒られたんだかんな」 「……」 「ありがとうは?」 「は…?」 「紫音に殴られたって言って問題になったら、ハル悲しむだろ?だから俺が怒られてやったんだぜ?ありがとうは?」 「そんなの…自業自得じゃないか!お前が勝手に合鍵持って行ったから…!」 「ま、そうかな?って訳でこれに免じてこないだの事は許してよ」 「お前…軽すぎる…」 「そこが俺のいいとこじゃん?てか、そんなとこ突っ立ってないで乗れよ」 「乗らない」 「えー。乗れって」 「乗らない。用があるならここで聞く」 「用…は、まあ謝りたかっただけだけど」 「じゃあもう済んだんだろ」 「用がなくたっていいじゃんよ別に。俺お前の事好きなんだから」 「……は?」 何言ってるんだこいつ。好き?って…。 「なんだよその反応。俺の行動見てれば分かんだろ?」 「全然分からない。どういう意味だよ」 「はあ?好きって言ったら好きって事だろー?アイラブユーだよ、アイラブユー」 「……お前は、好きな相手を縛って強姦したり罵倒したりするのか?」 「だから悪かったって」 「信じられない」 「本当だって。好きなの。お前が欲しいんだよ」 「じゃあ仮にそうだとしても、俺はお前の事全然好きじゃない」 「あー、もう!わかってるよお前本当ムカつくなー。てか、乗れよ!」 「乗らないって言ってるだろ」 「何で乗らねえんだよ」 「言わなきゃ分からないのか」 「だから謝ってんじゃん!もうあんな事しねえって!」 「だったら俺を乗せる意味ないだろ」 「はあ?何でよ。デートしてえの!」 デート?何を言ってるんだこいつ。そもそも、今更俺の事を好きなんて事言って、一体何がしたいんだ。 バンッとドアが閉まる音がして、柚季が車を降りたことに気付いた。すぐに背の高い柚季が目の前に立ちはだかる。 「いいから乗って!」 腕を掴まれそうになったから、身体を横に逸らして避けると、柚季の顔つきがみるみる獰猛になった。 こいつはきっとまた俺を強姦するだろう。自分の思い通りにいかない事が許せない性質なんだ。 「何なんだよ!そんなに紫音がいいのかよ!」 怒鳴られたって喚かれたって、絶対に車には乗らない。イライラしているらしい柚季を睨み付けて、柚季も俺を睨んだ。俺は折れるつもりはない。何時間睨み続けたって、こいつを拒絶してやる。 「こんの…クソかわいくねえ!!」 「おい何やってる!」 また柚季の手が伸びてきた時、学校の方からザッザッと土を蹴る音と怒鳴り声が聞こえた。 振り返ると走り寄ってきたのは黒野で、黒野は凄く驚いた顔つきをしていた。 「柚季…?」 「颯天…?」 その声が二人から発せられたのは殆ど同時だった。 「お前、何やってんだよ!こんな所でうちの先生に絡んで!」 先に我に返ったのは黒野の様で、柚季にそう詰め寄った。 ……二人は知り合いなのか?

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