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remind 4

「初めて犯された時の事も思い出したの?ねえ?答えてよ。どうなの?」  いつから。いったいいつから刑事さんはこうだった?分からない。思い出せない……。 「早く答えて!」     大きな声に肩がびくりと揺れた。答え、ないと……。 「……すこし、だけ……」 「そうなんだ。ね、初めての時、どうだった?痛かった?それとも、えっちな春のことだから最初から気持ちよかったのかなあ?」 「そ、そんなの……」 「教えてよ。知りたいんだ、春が処女喪失した時の話。あいつも気が利かないよね。撮るんなら初めから撮っとけって話。ねえ。春もそう思うだろ?」 「い……一体なんの話を、」 「僕ね、全部知ってるんだよ。春がエッチの時どんな顔をして、どんな声を出すのか。春がまだ思い出してない、事件の最中のエッチな姿も、僕は全部知ってる」 「どうして……」 「春はね、こういちさん、こういちさんって、すごく愛おしそうに名前を呼ぶんだ。『こういちさん愛してます』『こういちさんイかせてください』『こういちさん気持ちいいです』って」  ───頭の中に、うわーっと過去の記憶が押し寄せる。見たくなくて目を閉じたって、頭の中の映像は消せない。頭を振り乱しても、掻きむしっても消えてくれない。 「やめなさい春。綺麗な髪の毛が台無しじゃないか」  おもむろに両手を掴まれて、これまで懸命に張りつめていた緊張の糸がプツンと切れた。 「触らないでっ!」  俺は弾かれた様に暴れた。怖いし頭の中はぐちゃぐちゃだ。今の恐怖からも過去の記憶からも逃れたくて、ともかく必死だった。 「春!春!暴れるな!落ち着いて!」  瞬時に俺の身体の上に乗った刑事さんに、体重を掛けられて抑え込まれる。俺は無我夢中で暴れたけれど、でたらめな抵抗よりも効率よく人を制御する術を知っている刑事さんの方が一枚も二枚も上手だった。気づけば俺は、刑事さんの片手一本で両手を一纏めにされて頭上でベッドに縫いつけられてしまっていた。 「ふう……。いつも言ってるだろ?大声を出すのと暴れるのはご法度。次やったら怒るからね」  膝の上に乗り上げたままの刑事さんに顔を覗き込まれる。  いつもって……。  やはり、あの定かでなかった「今」の記憶は正しいものだったのだ。俺はきっと、何度もこんな目に遭ってきた。けれどそのたびにその記憶を葬って、俺は自分の心の均衡を保ってきたのだろう。忘れるせいで何度も何度も被害に遭うって事すら度外視にして。 「僕のことも、思い出した?」  上半身が覆い被さってきたから顔を背けたら、耳元でそう囁きかけられる。ゾッとして固まっていると、ふ、と刑事さんが笑う息が耳にかかった。 「春は分かりやすい」  そう囁いた後、刑事さんの吐息は耳の下に降りていった。そうしていきなりすうっと息を吸われる。 「……相変わらず、男を惑わす匂いがする」  首筋に鼻を擦り付けられ、嗅ぐように何度もすーはーされてはかなわない。気持ち悪くて身を捩るけど、息苦しいくらいに上からガッチリとホールドされているので逃れられない。 「やめ……ッ、離して……!」 「どうして?いいじゃないか。僕たちが付き合ってることも、思い出したんでしょ?」 「なっ……付き合ってなんか……!」 「恥ずかしがらないでよ。僕、あの動画を見る度にいつも思うんだ。あの中で春が呼ぶ『こういちさん』っていうのは、僕の事だよね?春は中学生のあの頃からずっと僕の事が好きで、僕に助けを求めてたんだもんね。気づいてあげられなくてごめんね、春」  ようやくにおいを嗅ぐのをやめて身体を起こした刑事さんが、とろんとした目で俺を見下ろしてくる。 「変なこと、言わないでください……」  殆ど懇願だ。ここまで来たらもう無理だってどこかで分っているのに、過去を知っても尚、元の刑事さんに戻って欲しいと願ってしまう自分がいる。だって本当に、これまでよくしてくれた刑事さんとは別人過ぎて……。 「ふふ、今日の春はいつになくまともだ。さすが、過去の記憶と向き合える様になった春は違うね。偉い偉い。よしよし。僕、嬉しいよ。春が僕をすごく愛してるってことはもう知ってたんだけど、どうしてかな。僕とこうしてると春はすぐおかしくなるから。壊れちゃった春とエッチするのは寂しいでしょ?だからね、初夜はまともな春と合意の上でって心に決めてたんだ。今日はようやく、念願が叶いそうだ」

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