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第7話
青は日がな一日中テレビを見て過ごしていた。それしかする事がないので仕方がないのだが、休むということを知らないのか、膝を抱えてひたすらテレビを見つめていた。
夜になるとバラエティ番組が増えてくる。高田もぼんやりと一緒に見ていたのだが、青はくすりともしないので面白くないのだと思いチャンネルを変えようとした。すると、手に持ったリモコンをさっと取り上げられる。抱えた足と腹の間に隠してしまい、また視線をテレビに戻す。
真剣に見ていたのか。しかし、面白いのだろうか。
仕方なく高田もテレビに目をやる。あまりこういう番組は好きではないが、出演者の言葉に思わずふっと笑ってしまった。少し悔しい。
すると、青が高田を見上げてぺたりと口元に手を触れた。
「ん?」高田が青を見下ろすと、ぺたりと自分の口元を触っている。そしてまたテレビの画面に視線を戻した。
首をかしげながら青を見ていると、彼がピクリと肩を震わせている瞬間があることに気がついた。そしてそれがテレビの中で爆笑が生まれている瞬間と同じであるということも。
もしかして。もしかして本当は面白いのか?
笑い方がわからないのか。高田は沈みそうになる心をぐっと持ち上げて、青の背後に回る。体を抱えながら脇腹のあたりをくすぐった。
「ふあ」
何とも言えない小さく間の抜けた声が青の口から漏れる。
ああ、一応声は出せるのかと思ってもう一度くすぐると、青はすくっと立ち上がった。そして躊躇なく服を脱ぎ捨てようとする。高田は慌ててその手を押さえた。
「違う、違う」
半分持ち上げているシャツを下ろして膝に座らせる。少し失敗してしまったかもしれないと思いながら、青の髪に顔をうずめた。
「そのうち声を出して笑えるようになるよ」
耳元で話す高田の言葉にぴくりと体を揺らす。顔を触ったのはどうしてそうなるのか知りたかったのかもしれないと思ったのだ。青はこくりと小さく頷いて、また視線をテレビに戻した。
青が声を出して笑っている日常。
なんだそれ。最高じゃねえか。
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