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第11話

 高田は冷蔵庫の中を見てそっとため息をついた。ほとんど何も残っていない。また買い出しにいかなければならない。  高田はもう青を外へ出すことをしなかった。青は何も言わずにルービックキューブを回している。罪悪感はある。彼が自分から何かしたいなどと言うはずがないのだ。  しかし、青を取られるのが嫌だ。その思考こそが傲慢だ。分かってはいるが、高田は本当に自分でもなぜだかわからないのに、青を手元から離したくなかった。 「買い出しにいってくるよ」  高田の言葉に、青は振り向かずにこくりと頷いた。ルービックキューブを与えてから青はずっとかちゃかちゃと色をそろえようと頑張っていた。驚くべき集中力。高田は苦笑すると靴を履こうと玄関にかがんだ。  と、突然青が走り寄ってきた。外に行きたいと言い出すのではないかとぎくりとしながら高田が振り返る。しかし手に持っていたのは全面そろったルービックキューブだった。 「出来た」  青がわずかに歓喜をにじませながら高田の目を見つめる。高田は驚いてそれを受け取ると、青の頭を撫でた。 「すごいじゃないか」  青は誇らしげに目を細めて、満面の笑顔を浮かべた。  高田は息を飲んだ。こんなに綺麗に笑っている青を初めて見た。思わずぎゅっと抱き寄せる。「出来た」もう一度青が耳元でつぶやいて、高田はさらに彼を抱きしめる手に力を込めた。 「じゃあ今日はお祝いだな」 「お祝い……?」 「美味い物をたくさん食おう」  そう言うと、青はまたまぶしい笑顔浮かべた。  たまらない。何て綺麗な顔で笑うんだ。  高田は一生、自分の手から青を離さないと心に決めた。  青から体を離し立ち上がると、「じゃあ行ってくるな」と頭をそっと撫でた。青はこくりと頷いていつもの定位置に戻ると、しげしげと買った時と同じ状態に戻ったルービックキューブを眺めている。高田はふっと息を漏らして笑うとドアを開けた。

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