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「物的証拠?」
不穏な言葉にアリーシャが眉を顰める。
「簡単に言えば、な」
渡された報告書を読みながらレオンが答えた。
「よろず屋」はギルドに加盟出来ない為、裁判事になった時に不利になってしまう。訴えられた場合言論だけでは弱いのだ。契約上の不備が無い事を示す証拠が必要になってくる。事前に此方に落ち度が無い事が証明出来れば法廷に持ち込む前に両者間で処理する事も出来る、言わば転ばぬ先の杖なのだ。
「まあ、そう言う事前処理はオレが大体しておくけど」
繁忙期ともなればそこまで手が回らなくなってくる。アリーシャにも念頭に置いておいて欲しいのがレオンの意向だ。
「理屈は分るけど。具体的にどうすれば・・・」
探偵でも無い限り現場から証拠を取り出すのは難しい。とは言えその探偵の真似事をするのもまたよろず屋だが。
「基本ICレコーダーとか・・・あとコレとか、か」
レオンが引き出しから取り出したのは。
「ハンディカム・・・・・だっけ?」
確かに相手の了承を得られれば強力な証拠にはなりそうだ。
「内容と日ごとに種類分けして、データは3年間保管するから・・・・」
画面を開きながらレオンがアリーシャに説明していく。だが名前の無いファイルの所まで来るとタッチパネルを操作する手が止まった。
不思議に思いレオンを見上げると目を逸らされてしまう。明らかな動揺。
嫌な予感に突き動かされファイルを開く。
「なっ・・・・・・・・」
言葉が出てこない。画面に映っているのは裸の一対、明らかな濡れ場。
レオンも男だし法的に問題を起こさなければこう言った画像を持っていても気にはならない。
だが問題はそこでは無いのだ。
「こんなのいつの間に・・・」
画面に映っているのはどう見ても自分なのだ。レオンの膝の上で後ろ抱きに抱かれている。行為の最中なのだろう頬を染め蕩けてしまいそうな表情を浮かべている。
「いや・・・・出張中の糊口凌ぎに・・・・・」
真っ赤になりながらアリーシャがしどろもどろになるレオンを壁際まで追い詰める。
「一週間以上空けた事ないクセに!」
理屈や折り合いを付けてレオンは帰ってきてしまう。それ位の期間は我慢して欲しいと思うのだが。戻ってくればいつも以上に求められ身体が悲鳴を上げても離してはくれない、そんな事を何回繰り返した事か。
「とにかく消してっ・・・・・・」
掴み掛かった拍子にハンディカムを弾き飛ばしてしまう。機械が床を滑り転がった拍子に再生ボタンが押されたのだろう艶かしい声が部屋に響く。
「!」
自分の物とは思えないほど甘ったるい声音にアリーシャは更に顔を赤くする。
映像を止めようと慌ててレオンに背を向けた瞬間床に押し倒されてしまう。
「放・・・・・せっ!」
「離れてる間オレがどれだけ我慢してるか分るか?」
恥ずかしさで死にそうになる。どうにか手を伸ばすがギリギリの所で指がハンディカムに届かない。
「そんなの・・・・・知らな・・・・い!」
「もっとよく聞けって。アリーシャのよがってるカワイイ声」
「嫌だ!」
腰の辺りに体重を掛けられている為思うように力を入れる事が出来ない。いや、理由はそれだけでは無い。
「・・・・・っ」
羞恥を押し破って疼きが身体に蔓延していく。自分の声で感じているのを悟られたくなくて足掻くが快楽に力を喰われた状態ではレオンを投げ飛ばす事が出来ない。
「・・・っや・・・・だ」
目を閉じて両の耳を塞ぎ堪える。けれどもその手も後ろから回されたレオンの手であっさりと外されてしまう。
自分の身体を貪られる音の間から断続的な喘ぎが漏れてくる。頭がおかしくなったような淫靡な言葉を撒き散らしながら絶頂を求める声。
自分の身体だ。目を閉じていても画面の中の自分が何をされているのか分る。
「放・・・・・して」
懇願しても拘束する腕が放れる事は無く、それどころか益々力を入れられ抱きしめられる。
「どうして欲しい?」
後ろから掛けられた低い声に絡め取られる。本能的に身体を丸め防御の姿勢を取ってしまう。
「この手を解く事以外なら何でもしてやるぜ」
一番して欲しい事はしてくれない。このままでは映像を止める事も火照りを自分で鎮める事も出来ない。耳を犯す卑猥な自分の声は快感を増長させるだけで絶頂までは導いてくれない。
八方塞がりな状態に涙が出そうになる。
「映像・・・・止めて・・・・・」
息も絶え絶えになりながら何とか言葉を繋ぐとあっさりと了承したレオンが映像を止める。けれどそれで熱を持った身体が収まる筈が無かった。
「次は?どうして欲しい?」
拘束する腕はまだ放れない。徐々にレオンの声も掠れ耳元で熱い吐息に変わっていく。その熱に理性が剥離していくのが分る。それでも欲望を押しとどめる。この男の思うようにはさせたくない。
「・・・・!ひゃうっ」
意識より先に身体が反応してしまい腰が揺れてしまう。その瞬間精器を摺ってしまい強い刺激が神経に走った。それが、最後に残った理性も愉楽に飲み込んで行った。
「お・・・・願い・・・もう・・・・イかせ・・・・て」
泣きながらもう一度哀願する。
「・・・・・・・・っ」
下着ごとズボンを刷り下ろされる。前戯もそこそこに片脚を持ち上げられるとアリーシャの小さな入り口にレオンの先端があたる。
そのまま手を離されると自重に身体が沈んだ。
「は・・・・・・っん」
待ち侘びた感覚に身体が悦び震える。
張り出した部分が内側をなぞりレオンの根元をアリーシャの後孔が口付けをする。
「あ・・・・ん・・・あっ」
下から何度も腰を打ち付けられると甘い声が室内に響いた。
(・・・・これって・・・・・!)
何かに気付いたアリーシャが慌てて自分の口を塞ぐ。
先程の映像を再現させられているのだ。
画面の中のおかしな自分になりたく無くて声を押し殺すが甘い疼きが身体に滞留してしまい脳まで侵食されて行く気がした。
「ん・・・・・んんん!・・・・ふ・・・」
胸の突起を両方ともレオンの手で潰され身体が弓なりに反る。こんなに堪えているのにお構いなしの行動に苛立ちさえ覚える。このまま、この男の与える快楽に翻弄されるのは嫌だ。
薄目を開けると床に転がったハンディカムが目に映った。甘い痺れをどうにか押さえ手を翳すと機械は粉々に砕け散った。
ー風刃の魔法。
「データが・・・・」
唖然とするレオンの声がする。
いい気味だと思った。けれど我慢も限界に来ていた、上下の抽送を手伝うように自ら腰を揺らしてしまう。身体が揺れる度繋がった部分がお互いの先走りの密でクチャクチャと卑猥な音を上げる。
「あ・・・ああっっ・・・・ダメ!」
一際激しく腰を打ち付けられアリーシャが果てるのと同時に体内にも熱い飛沫が放たれた。
レオンの腕の中で小さく呼吸を繰り返す。大量に精液を放ったのに身体の中にいる彼はまだ硬いままだ。不意に顎を指で掴まれ上を向かされた。
「次、は?」
情欲に濡れた瞳と目が合う。あれだけ堪えた熱が一度の射精で冷める筈も無くアリーシャもまた繋がった部分から疼いていく。
冷静さも理性もレオンに食べられたままだ。
「・・・・・・ん」
目を閉じると言葉の代わりにレオンの手に口付けをした。
行為の途中で気を失ってしまったアリーシャの頬をレオンの手が優しく撫でて行く。その表情は酷く満足そうだ。
まさか廃棄予定のハンディカムであそこまでの結果が得られるとは思ってもみなかった。最初は小さな悪戯心から、やがて大きな欲望へと変わりその小さな身体を飲み込んだ。
羞恥に震える姿も従順に快楽の虜になる姿も全てがレオンにとって愛しい造形なのだ。
新しいデータを手に入れた男は子供のような笑みを見せるのだった。
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