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bon-appetit
Amaro39%Dolce61%
午後の穏やかな日差しを大きめの窓が優しく取り込んでいる。キッチンには暖かな空気と湯気、そして甘い香りが漂っていた。
テーブルに並べられたお菓子作りの材料や道具を紫苑色の瞳がキラキラと見詰めている。
きっかけはレオンが食べていたお茶菓子だ。自他共に甘党と認める彼はよくお菓子を買って来る、けれど目当ての菓子が無かったり急に食べたくなった時などは自分で作るというのだ。
市販品と差異のない味と出来栄えに一緒に食べていたアリーシャは瞠目と興味を覚えた。
アリーシャ自身も自炊はできる、でもそれは必要に駆られてやってきた事であって趣味や嗜好とは程遠いものだ。こんな風に自分の手でお菓子を作れたら楽しいのではないだろうか。
素直にその事をレオンに伝えると今度一緒に作ろうという話になったのだ。
それから3度、レオンの菓子作りを手伝う形でこうして2人でキッチンに立っている。レオンの完璧なアシストもあって最初ぎこちない手つきだったアリーシャもあっという間に慣れた。生地を寝かせたりオーブンを温めて置いたりと普段の料理とは違う工程に興味は尽きない。そんな事を繰り返して4度目の今日に至る。
「ありがと。レオン」
「ん?どうした」
チョコレートを湯煎で溶かしながらレオンが聞き返す。
「その・・・・誘ってくれて」
こうして穏やかな日を過ごす、それは今までのアリーシャにとっては考えられないような時間だ。傍から見れば些末な、なんでも無い日なのかもしれない。けれど殺伐とした日々を繰り返していたアリーシャにはどうしようもなく愛しい時間。
楽しい時間があってそれを共有できる相手がいる、それはこの上ない幸せな事だと思えた。
「だから・・・嬉しいんだ」
お菓子より甘い笑顔を見せてレオンに笑う。けれど危機管理も蜂蜜より甘かった事を直ぐに思い知らされてしまう。
(カワイイ・・・・)
お菓子作りの手を止め思わずレオンが口元を抑える。
「それに八雲もフィオナも喜んでくれたし」
嬉しそうに話すアリーシャとは反対にレオンは固まってしまう。
「え?アレあげてたの?」
問われたアリーシャは不思議そうにレオンを見る。作るお菓子は毎回数種類で2人に対しては量が多い、いやレオンなら食べきってしまうのだろうが健康の事を考えると4等分するのが良策だと思う。
「ふぅん」
素っ気なく返事をして菓子作りに戻るが内心は蟠りだらけだ。
(オレはアリーシャに作ってたんだけどな)
(あれ?寒気!?)
十分に暖かい筈の室内で背筋に冷たいものを感じ思わず周りを見回すが殺気を放つモノは見当たらない。また風邪を引いてしまったのかとアリーシャは首を傾げるばかりだった。
「~っと」
楽しげにオーブンでお菓子が焼き上がるのを見ていたアリーシャだが不意に我に返ると小さく咳払いをした。菓子作りを始めるとどうにも子供っぽくなってしまう事が気に掛かるようだ。実際子供なのだし13歳らしい反応とも思えるのだがアリーシャとしては受け入れたくない部分があるようだ。
(とりあえず、流しを片してお茶の準備と・・・・・)
トテトテとキッチンを動き回っているとレオンの姿が目に入る。大きめのボウルの中、泡立て器でかき回していたのは。
「クリーム?」
真っ白な生クリームが既に出来上がっていたがアリーシャは小首を傾げる。今日作っているのは簡単な焼き菓子ばかりで既に殆どが出来上がっている。生クリームなど何処で使うのか見当が付かない。不思議そうに見上げるアリーシャにレオンがのんびりと返す。
「これが一番重要だからな」
そんなに大切なら前もって教えて欲しかったのだが。
そう感じたアリーシャの前にクリームが盛られたスプーンが差し出される。味見にしては量が多すぎる気もするのだがそれでも甘い誘惑から素直に口に運んでしまう。
舌に触れたクリームは香ばしくて口の中でさらりと溶けてしまう。とても美味しいのだが疑問も一つ持ち上がる。
「甘過ぎ・・・・ない?」
ホワイトチョコレートのような喉の奥が焼け付く甘さ。砂糖の入れ過ぎにも感じられたが普段のレオンならこんな間違いは絶対にしない筈。
「そうか?」
確かめるようにレオンがアリーシャの唇を嘗める。
「なっ!」
驚いて開いた瞬間を狙い小さな口に舌先を滑り込ませる。逃れようとする舌を絡め取り擦り合わせる。味を見ている、と言う様に舌や上顎をなぞり唾液まで嘗め取っていく。
「っん!」
何とか突き飛ばす形で唇を離す。真っ赤になりながらアリーシャがにらみつけるがレオンは意に介していない様子で自分の口角を嘗める。その姿は逃げなければと思わせるには充分だった。踵を返して走ろうとするのとほぼ同時に身体が変調を来す。
「え?」
体中が熱くなり息が上がる。薄い膜が張ったように感覚がぼんやりとしてきて足が自分の体重を支えられなくなった。膝から崩れ落ちるのをレオンの腕が支える。
「本当に、酒に弱いな」
レオンの声が麻痺しかかった脳に響く。
(お・・・酒・・・?)
確かにアリーシャは酒に弱い。アレルギーや体質的なものでなく単純に弱いのだ、少量でも酩酊してしまう。以前誤って飲んでしまった時には酷い目にあった。けれどそれが何だと言うのだ。今回はお酒など飲んでいない、この数時間で口にした物と言えばさっきのクリームくらいだ。
「まさか・・・・」
答えを出すよりも早くキッチンの床に引き摺り倒される。押さえつけられた身体から這い出ようと藻掻くがアルコールが回り始めた身体は力を入れる事が出来ない。それどころか暴れれば暴れる程酔いが浸透し自由を奪っていく。
あっという間に着ていた服を全部剥ぎ取られてしまう、それでも抵抗すると手首を上手にエプロンの紐で結びあげられてしまった。
「お菓子・・・見ないと・・・こげちゃう」
何とか逃れる方法を探すが酔いの回った頭ではそれ位しか思い浮かばない。
「いい。こっちの方が美味しそうだから」
きっぱりと否定したレオンはボウルに入ったクリームを指で掬う。見せつけるように一度空中で止めるとアリーシャの首に擦り付ける。
「なに?」
冷たさに身を竦めると今度は熱い舌がクリームを嘗め取っていく。
「ひゃ・・・あ・・・」
くすぐったくて身を捩ると今度は肩口にクリームを落とされた。それを舌がまた嘗め取っていく。腹や腿にクリームを塗られては嘗め取られる。身体中をクリームと唾液でベトベトにされ妖しい疼きが下半身に蔓延していく。
「ん・・・っく・・・ん」
憤る子供の様な声を上げそれでも堪えていたが乳首に大量のクリームを塗られると声が漏れ出てしまう。
「あっ・・・やぁ・・・っ」
愛らしくふくれた先端を舌先で転がされ強く吸われる。繰り返し何度もお気に入りのお菓子の様にレオンはクリームを付けてはそこを食べていく。
「ああっ。んう、あ」
甘噛みされ反対側の突起も遊ぶように弾かれると甘い、悦んだような声が上がってしまう。
(違う・・・・悦んでなんか・・・)
頭では否定しても精器からは蜜が零れていく。それを待っていたかのようにレオンがクリームを精器に塗り込めていった。べったりとクリームを塗り膝頭を押さえ脚を開かせたらあとはやることは一つしか無い。
「待って!そこは-」
食べちゃダメと言う言葉は喘ぎに変換されてしまう。先端を口に含まれ鈴口を舌先がつつく。強すぎる刺激に直ぐにでも達てしてしまいそうだが根元を手できつく握られてしまい果てる事は出来ない。
手を放して欲しくて暴れる様に腰を動かしたがレオンは聞き入れない、筋に舌を這わせわざと歯を立てるがその痛みさえ快楽に変わっていく。
「やっ…や…だ」
行き場の無い快感が涙腺を壊す。ポロポロと頬に零れ落ちた涙は酷く熱かった。
散々アリーシャのソコを味わい尽くして漸くレオンが口を離す。
「イクのか?」
耳に届く低い声音。羞恥から目を反らすが限界はとうに越えていた。レオンの声に操られるようにコクンと頷いてしまう。
「いいぜ」
先程まで根元を押さえつけていた手が今度は射精を促す様に抽送を繰り返す。
クリームを潤滑剤にしてヌルヌルと指が蠢く。長く快楽を滞留させた身体にはそれで十分だった。
「や………ああっ!」
放たれた液体が腹部を汚していく。生々しい臭いが鼻についたがそれで酔いが覚める事はなく、それどころか益々意識が霞みがかって行った。
拘束されていた手首を解かれたが身体はもう思うように動かない。生暖かい水の中を泳いでいるように空気がまとわりつく。
緩慢な動きで、それでも逃げ出そうとするアリーシャの前にクリームがたっぷりと付いた指が差し出される。その指を睨み付けると強く頭を降った。これ以上アルコールを取ったら完全に酔い潰れてしまう、そうなったら最後何をされるか分かったものではない。
「そうか?こっちの口は物欲しそうにしてるけどな」
グチュリと指が後穴に差し込まれる。塗り込めるように内側をなぞり敏感な部分を擦る。
「こんなに必死に噛み付いて、よっぽどお腹空いてたのか」
遠慮無く増やされた指が内壁を押し開いていく。
「ひうっ!や…やだ…」
限界まで広げられた場所が収斂を繰り返しながらレオンの指に絡み付く。その姿は拒絶では無く何かを待ちわびている様にも見受けられた。
「指じゃいや、か」
「ちっ…違……」
慌てて否定しようとするがそれよりも早く、甘い香りを漂わせてレオン自信が入ってくる。
「ぬいて……お願いだから」
筋肉が弛緩し始めたアリーシャにはもう懇願するしか方法が無い。口に運んだのは最初の一口だけ、けれどアルコールは皮膚からも摂取される、しかもその吸収スピードは経口よりも数段早い。
頭の片隅でその事を思い出していたアリーシャは勝ち目も逃れる術ももう無い事に絶望しそうになる。
それでも僅かに残った理性を手放す事は出来ない。全てをレオンに委ねてしまえば何をされるか、きっと酔いが覚めた時に羞恥で死んでしまう。
何でもいい抵抗しなければ。
「やら……らめぇ……」
既に酔いは呂律が回らなくなる位まで浸透してしまっていた。
拒んだ筈なのに舌足らずな言葉はレオンを興奮させてしまったようだ、腰使いがより激しくなる。
「ひぁっ……あ…!ああ……ん」
敏感に感じる部分を切っ先で抉られて言葉らしい言葉が出る訳も無く、拒む術を全て奪われてしまう。腰を押さえつけてられ貪る様に性器が中を掻き回すと2度目の絶頂を迎える。熱い液体が腹や首に掛かる、肌を伝い落ち床を濡らすよりも先にレオンもまたアリーシャの身体に吐精していく。
「ふっ……うぅ……」
2人分の精液を流麗な指が塗り広げていく。
「もうどれがクリームか分からなくなっちまったな」
レオンが悪戯っぽく笑う。けれどその声はもうぼんやりとしかアリーシャには伝わらない。まるでスライドを一枚隔てているように近くて遠い声。
「アリーシャ」
名前を呼ばれ素直に顔を向けてしまう。
「これは?」
白い液体の付いた指がアリーシャの口に差し込まれる。
「ん……くぅ……」
香ばしさと喉に焼け付く甘さ。
「……甘い………」
最初に食べた時と何も変わらない味なのにもう心から美味しいと思えなくなってしまった。けれどそんな事レオンは全然お構い無しだ。
「じゃあ、こっちは?」
再び差し込まれた指を嘗めた瞬間身体に電流が走る。リアルな匂いと味に反射的に舌が指から逃げ出す。
「…!」
酔いが回って熱を持った頬が更に赤くなる。その反応を楽しむようにレオンがからかう。
「どっちのか分かるか?」
「……そ…んなの」
分かる訳が無い。分かったとしても恥ずかしくて答えられる筈が無い。節操の無いレオンの行動に苛立ちを覚える、口の中を蹂躙する指に噛み付こうと最後の力を振り絞るが顎に力を入れるよりも早く指は引き抜かれてしまう。
「じゃあ、直接味見してみるか」
指の代わりにレオンの性器が無理矢理押し込められる。
「んっ……!!」
口の中を隙間が無い程支配され拒絶の言葉すら食べられてしまう。
「オレは分かるけどな」
ボウルを引き寄せたレオンが指にクリームを絡めると赤い舌がそれを嘗め取って行く。その姿は妖艶と呼ぶに相応しかった。
「アリーシャのはこれよりずっと甘くて美味しいからな」
その言葉を聞くと、僅かに残っていた理性でアリーシャが睨み付ける。そんな言葉を吐露するなんてレオンは大嘘つきかとんでもない味覚音痴だ。以前無理矢理飲まされたあの味を思い出して押さえられた口から非難の声が漏れる。
「ところで」
「?」
「ずっとこうしてるつもり、か?」
睨まれているのにレオンはとても楽しそうだ。唾液の付いた指をアリーシャの頬に滑らせる。
「オレは良いけどな。カワイイ恋人がクリームまみれで自分のぺニス咥えて上目遣いしてる、なんてずっと見てられるからな」
よくもまあこんな恥ずかしい言葉がポンポン出てくるものだと呆れてしまう。睨んでいる筈がレオンには潤んだ瞳で見上げている様にしか見えなかったらいし。悔しくてまた涙が溢れた。
「これヌイてくれたら終わりにするけど?」
涙を払われながら出された提案に、アリーシャの瞳が少しだけ光を取り戻す。
本当に。本当に?この恥ずかしい行為を終わらせてくれるのだろうか。
口元に笑みを浮かべたままレオンが頷く。
引き剥がそうと足掻いていたアリーシャの手を取ると自分の根元へ手繰り寄せてしまう。
拒もうとしても更に大きくなった性器に顎を限界まで開かされて噛み付く事さえ出来ない。
今はレオンの言葉を信じるしかない、アリーシャは目を閉じると拙い口と手の動きで扱き始めた。
「ひ…ぅ…」
キッチンの床に寝転んだアリーシャが吐息を漏らす。結局口から溢れる位大量に吐き出された精液を全部飲まされ味の感想まで言わされてしまったのだ。レオンの提案に対してはお釣りがくる位のサービスだ。
けれどもうそんな事もどうでもいい。今はこのドロドロの身体を洗い流したい。気だるい身体をどうにか起こす。幸い酔いも少し覚めてきた、それなのに身体が疼いているのは気のせいだろうか。
「おっと」
逃げ出そうとしたアリーシャの身体をレオンの手が簡単に抱き上げてしまう。
「離して!」
「酔っぱらいを一人で風呂に行かせる訳にはいかないだろ」
「誰のせいだと…」
さも親切に浴室まで運んでいると言った風だがそんな単純な話でも無い。レオンの事だそれ以上の事を覚悟しなければならない。
往生際悪く足掻くアリーシャを宥めるように額にキスが落とされる。
「何もしないって。悪戯はするけど、な」
そう囁かれた言葉にアルコールで赤く染まった筈の顔が青ざめる。悪戯は確定なのか。楽しげなレオンとは逆にアリーシャは目眩を覚えていた。
「・・・・・・・・・」
もう言葉を告ぐ気力さえ残っていない。あの後浴室で悪戯以上の事をされたアリーシャはぐったりと身体をソファーに横たえていた。そんなアリーシャとは対照的にレオンは元気だ。前から思っていたのだがこの男、性行為をする度に元気になっている気がする。
「悪かったって」
全く悪びれた様子も無くレオンがそう謝罪する。
「オレも体に回ってたから歯止めが効かなくって」
いつも制御なんかした事無いクセに。恨みがましく見詰めるアリーシャの脳に疑問が一つ湧いた。
回る?レオンも酔っていたのだろうか?
アリーシャとは違いレオンはザルだ。普段酒を呑まないのも「酔わなくて面白くないから」という位には強い。そんなレオンが酔う?そもそも酒に酔ったなんて一言も言ってない。
「もしかして・・・・」
いや、もしかしなくても盛られていたのはアルコールだけでは無かったのでは。纏わり付いていた疼きを思い出す。あんな風に乱れておかしくなってしまった理由。結びついた答えに怒りが湧き上がって来る。唇をかみ締めるアリーシャにレオンは何かを察したようだかそれでもどこ吹く風だ。
「さあ?あ、クッキー食べるか」
差し出されたアイスボックスクッキーはとても美味しそうなのだが、これではまるで美味しいお菓子で誘い込んで逆に食べてしまう魔法使いが出てくるお伽噺ではないか。
「もう、絶対にお菓子作りなんてしないからっ!」
虚勢と分っていてもそう叫ばずにはいられないアリーシャだった。
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