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第23話

今、正純何してんのかなー。まだカナちゃんと一緒にいんのかなー。でももう22時過ぎてるし別れてるか……いや、カナちゃん家の近くでしゃべってんのかも……あー、正純がカナちゃんに返事したのか気になる!まあ、付き合うってなっても俺は正純の幸せを応援するけど!……そりゃ、こっそりとは泣くけどさ。 そんな事を悶々と考えながらノロノロ箸を動かして食べていると、ごはんの上に豚の角煮がちょんと乗せられた。そういえばまだ豚の角煮には手を出してなかった。というか、生姜焼きばっか食ってた。 チラッと梶を見れば、こっちに体を向けて頬杖をついて俺を見ていた。なんだと思いながらも、良い色に染みてる角煮を口に運ぶ。 「……やばうま」 噛んだ瞬間のやわらかさ、口の中でほろほろとほどけてく肉の塊。そして、しょっぱさよりもまろやかな甘さが立ってる煮汁が俺の好みドンピシャすぎて感動する。 「これ梶のお父さんが作ったやつ?」 「ううん、俺!」 「なんだ、梶かよ」 メニューに角煮なんてなかったから、わざわざ別で作ってくれたのかと思ったら梶が作ったやつかよ。感動薄れるわー、うますぎるけど。さすが好みが一緒なだけあってわかってるわ。ドストライクな味付け。ごはんがめちゃくちゃに進む。あー、うまー。 「――て。ええっ!?梶が作ったの!?」 「ぶっ、反応おっそ!弟たちのお守り任されちゃって買いに行く暇なかったからさ、こんなんだけど俺からのクリスマスプレゼント!絶対この味付けならコウ好きだろって自信あったけど、食べてもらうのって緊張すんね!口に合ったみたいでホッとしたよー!」 「うーわ、マジかあ…。俺なんも用意してないんだけど」 「いいよー、こうしてクリスマスをコウと過ごせてるのが何よりのプレゼントだし!」 笑顔の梶にくしゃりと頭を撫でられた。好きだっていうのが伝わってくる撫で方と視線に、照れ臭くなってそっぽを向く。 ほんと、俺は梶に踊らされすぎ!もっと梶の好きオーラに耐性つけねえと。 ぷにっと何かで頬をつつかれる。睨むようにしてまた梶を見れば、思った通りつついていたのは梶の指だった。 「なに」 ぶっきら棒に言い放てば、耳たぶを捏ねるようにして触られて肩をすくめる。耳はくすぐったいからやめろと抗議たらたらに睨むと、軽く笑ってまた頭を撫でてくる。 「コウ、一緒にクリスマス過ごしてくれてありがとう。すっげえ好き」 「おっ、前は…!そういう事をストレートに言ってくんな!こっちが恥ずかしいわ!それに、ただ一緒に店の手伝いしただけじゃねーかっ」 「それでも一緒だったでしょー?俺さ、黙ってられない奴だって言ったじゃん?学校とかでは自分なりに結構我慢してたんだよね。でも、さすがに限界。好きって言わないと自分の中に好きが溜まりすぎて死ぬ!コウ好きだよー!大好きー!」 「うげっ」 ガバッと抱き着かれてとっさに後ろに手をつく。ぎゅうぎゅう抱きしめられて、興奮してる犬かよと梶の背中をぽんぽんと叩いて苦笑しながらその気持ちに応えられない自分がもどかしくなる。 それと正直、羨ましくも思う。 梶みたいに、俺も正純に言えたらいいのに…。 でもそんな事、男から好意を持たれるのが嫌いらしい正純にはまだ言えない。 言うとしたら――卒業式。 その日が、後悔しないで前に進む為の、俺の決戦日だ。 ―――――――――― おいしいご飯をたらふく食べて、梶のお父さんとお母さんにごちそうさまでしたと言ってから荷物の置いてある2階の自宅へと梶に連れられて上がる。 「…あれ、素直(すなお)(ひかり)もまだ起きてたの?おじいとおばあは?」 「2人とも寝た。ふあ~あ~、ねむいよー」 「ふあ~あ~、まあくんねむいー」 リビングへと入れば梶より10歳下の双子、素直くんと光ちゃんの姿があった。コタツに入ってテーブルにぺたっと顔をくっつけて、眠そうな目を必死にこすって頑張って起きている。 「なに、今年もサンタさんと友達になろう大作戦してんの?」 去年遊びに来た時もそんな事を言って遅くまで必死に起きてようとしてたのを思い出して聞くと、2人とも同じタイミングで俺に親指を立ててみせた。その姿が微笑ましくて思わず笑ってしまう。 「じゃあ、サンタさんが来た時のイメージトレーニングをしよー!」 「「おー」」 「まずは目をつぶってー」 そう言って梶は2人の目元を手で覆う。 「サンタさんがトナカイのソリに乗って、シャンシャンと鈴を鳴らしながらやってきました。窓から大きなプレゼントの袋を持って、うんしょとお家に入ってきます。サンタさんはまず、用意されたおせんべいとお茶を飲んでちょっとひと休み。それから2人の部屋へと抜き足差し足忍び足で行くと……」 すう、すうと静かな寝息が聞こえてきた。恐らく目を梶に覆われた時点ですでに眠ってしまってたんだろう。梶が手を外しても目が覚める気配がない。 「コウ、悪いんだけど光抱っこしてくれる?」 「別にいいけど、起きねえ?」 「大丈夫。光は一回寝たらちょっとの事じゃ起きないから」 そう小声で言って素直くんをひょいと抱き上げた梶に倣って、俺も光ちゃんを慎重に抱き上げる。子供を抱っこするなんて経験がなくて、光ちゃんが起きない事を願いながら梶の後を追う。2人の部屋に着いて、壁際に置かれたそれぞれのベッドへと寝かせて布団をかけてやり、ぐっすり寝てる事を確認してから部屋を後にした。 「あー、緊張した」 「ははっ、ありがとうコウ。遅くなっちゃってごめんね?家まで送ってこっか?」 「いいって。女子供じゃねーんだから」 「えー、いいじゃーん。送らせてよー。もっと一緒にいよーよー」 そんな風に甘えた口調で言って来た梶が、コートを着て荷物を取ろうと前屈みになった俺の背に抱き着いてくる。 「ちょっ、重…っ!」 「好きだよ、コウ」 「――っ!だからっ、恥ずいんだっつーの!耳元で言うなバーカ!つか、重い!」 「えー、無理ー」 拗ねたように梶は言うと、俺を起こして首元に顔を埋めてきた。重さはなくなったけど、髪が当たってくすぐったい。 「ちょっと、くすぐってえんだけど」 「あー、コウの匂いー」 「はあ!?やめろ、嗅ぐな!」 「今日のおかず…」 「!?~~っ、死ね!」 「ぐふっ」 他人の下事情、しかも自分がネタにされるだなんていい気分になるわけがなく、怒りと羞恥を込めた俺の肘鉄が梶の鳩尾にくい込んだ。

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