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実家に帰宅
お互いリーディングを競いあい、高めあいながら上位に君臨した。
仕事、レースは体調管理もきちんとこなす。
休みはずっと二人きりで愛し合う、片時も離れない。離れたくないとばかりに……。
ジョッキーになり、あっという間に4年が立つ俺も23になった。
今年は大寒波で競馬が中止になり、暇をしてた。
実家から電話が掛かって来た。
ちょうど今日は休みでダラダラしてた。時間を見ると11時半過ぎ……母からだった……
『拓美……一回帰って来られない?…お……さんがぁ……』
様子が変……。
『えっ……?どうしたんだよ?急に母さん……?泣いてんの?』
何も言わない母、だが泣いてるのが分かった。
気の強い母だから、嘘のような弱々しさ。
『……母さん、取り合えずテキに話して1度帰るから。』
電話を切った。ベッドに一緒に居た片山に軽くキスをし着替える。
テキに少し実家に帰る話しをした。暇だからすぐに了解され、自室に戻り片山に留守を頼んだ。
片山は少しの荷物だけ一緒にまとめて俺の車で駅まで送ってくれた。
窓を開けキスをして連絡すると約束して帰って行った。
東京までの切符と実家までの乗車券を買って新幹線に乗り込んだ。
二時間掛かって東京駅に着いた。時間を見ると17時……こっから30分で実家の駅に着くから取り合えず電話を入れた。
お手伝いのふみさん(俺が小学生の時からのお手伝いさん)が電話に出た。
なんかしらないが、町の中でも大きい○○病院に行って下さいって……?
う~ん?わからん?とにかくタクシーに乗り病院に向かった。病院に入る前に片山に無事実家まで着いたよ♪とメールを送った。
病院の受け付けで部屋を聞き、病室に行く……何故個室を?……ノックをし中に入るとベッドに心電図に酸素マスク、横たわる親父の姿……にすっかり痩せ細った母とふみさんが居た。
俺の姿を見て抱きつき震える母?ふみさんは目にタオルを当ててる?
「えっ……とただいま母さん?何が何だかわからんけど、どうしたんだ?」
ノックの音がして看護婦から主治医が呼んでいると……。
取り合えず母をなだめてから話しを聞きに診察室に入った。椅子に腰をかける
「先生あの~父の?」
「……正直に言います。沢田先生なんですが……全身に癌がまわってて既に手がつけれない状態です。
1年前に胃癌が見つかって半分位切除したけど、心臓もかなり弱ってます。
手を尽くしますが……2~3日が山です。
なるべく側に居て上げてくれませんか?お母さんも顔色が良くないので」
(え~とォ……親父が…山?って事は死…ぬ?嫌まてまて、えっ~と親父いくつだったっけ?俺が……産まれた時25だったっけ?)
グルグルして頭が回らない。
診察室前の長椅子に呆然と座る……。
(……あぁ……と母さん達を休ませる為に帰さなきゃ)
病室に入る前に顔を洗う。
心配事ふやせないし、パンッパン……と頬を叩き病室に入る。
「母さん話しは先生から聞いた。
でも今は大丈夫俺が親父に着いてるから1度家に帰って休んで、ふみさん母さんをお願いします。」
「……拓美……は?」
「俺は大丈夫だよ♪心配要らないから。」
二人は帰って行った。
暫くして親父が目を覚まし俺の顔を見てビックリしたように目が開く。
俺は親父の手を握ると、力弱いが握り返してくる。
「……なに寝…て…んだよ。親父……。」
頬に手が伸びて来る……なに?涙?拭われてる?……と始めて笑顔を見る。
頭を布団に置くと髪を撫でてくれた。
「フッ……始めてだね。父さんが俺の頭を撫で……くれ……たの」
親父は一息ついてからゆっくり話した。
「……そぅか?
……悪かったな……仕事休ませて……。
母さんは?」
「顔色悪いからふみさんと帰らせた。俺今寒波でレースないから2~3日休みを取って帰って来たんだよ。」
「そぅ…か……」
眠りに入った。
俺は取り合えず廊下にでてテキに電話を入れた。
心配してたから……片山には今日はやめておこう……あの人の事だから凄く心配する。
三時間程たって母さんと妹が来た。妹は受験生で忙しい身だが、俺が来てる事で病院に来た。
母さんに少し任せ廊下をでて中庭の喫煙所に向かう。
「ォ……お兄ちゃん。騎手を辞めて帰って来れない?」
「ハァ?」
「あっ……辞めなくても。近くの競馬場に移転出来ない?」
「…………。」
「お父さんも悪いんだけど……実はね
……お母さんも……長くな……の早くて半年良くて1年だって」
「…………」
「お父さんとふみさんが話してた。心臓が弱ってて……次に発作が起きると……厳しいって……」
妹の話しを聞き、何となくズルッズル~ッと地べたに座った。
妹は母さんの所に行った。
俺は知らなかった事ばかりで、何をどうしたらと膝をたて無性に思った(優馬…側に居て欲しい)と両腕を抱き締める。
ふとバイブがなる。メールが来て片山の名前……
[拓美……少しで良いから電話出来たらちょうだい。声が聞きたい。]
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