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苦しいな
プ……プルル、プルル
『もしもし、拓美?』
『…………ッン……俺』
『…………どうした?』
声が聞きたいって言うつもりが声が詰まる。
『『…………』』
何も言わない、ただ……いまは側に居ると感じたい。ただ感じたい……だけ……なんだ
暫くしておやすみとばかりに電話を切る。
「お兄ちゃん、今良い?」
「玲奈?大丈夫だぞ」
木の側から茶髪の俺より体格の良い男が妹を呼ぶ。妹は俺に
「お兄ちゃん、私の彼氏……」
丁寧なお辞儀をする男
「初めまして玲奈さんと結婚前提にお付き合いしてます。藤岡勉って言います。」
「沢田拓美です。結婚前提にって……」
どうやら俺の居ぬ間に見合いしたらしく。
医者の卵……妹は形だけでも両親が死ぬ前には結婚したいと……。
考えておくと話し二人は母を連れて帰って行った。
ずっと父を見ていた。日が登り母とふみさんの姿……だが明らかにやつれてる母
「拓美……今日は母さんが着くから1度帰って休みなさい」
俺は首を振り
「俺はどこでも寝れるからここに居るよ……父さんについて居たいんだ。」
俺は病院の出口まで送った。
夜になり容態が急変した。
慌てて皆を呼ぶ。母・妹・ふみさん・藤岡あと…一人の姿
バタバタする、心電図のピー音が鳴り響く…。
「午前3時30分……御臨終です。」
父は天に召された。
母は倒れ掛かる所で一人の姿が支えた。
母が倒れる!
よく見ると居る筈のない片山優馬が
「な……んで?優馬……」
(わけがわからない!なんで優馬が居るの……夢?)
ふみさんと藤岡が母を片山からそぅ~と預かる。片山は俺の目の前に両手を挟み
「…………心配で来ちゃった。拓美?」
片山の肩に頭を預けた。涙が着ている服に染みている、声は情けないから出さない。片山は抱き締めてくれる
落ち着いた当たりで片山はテキに報告して取り合えず休みを貰った。
いきなりの登場に皆は驚いてたが、優しく迎えてくれた。
あくまでも先輩としてずっと側に居てくれた。
次の日お通夜・葬式一通り終わって、片山はすぐ地元に戻った。俺の変わりに調教する頭数が増えている為に……。
母は葬式後、片山のお陰なのか…かろうじて俺の仕事の話しとか、色んな話しをし気を張って居たが、片山が戻った途端に脱け殻のように元気がなくなった。
俺は親父の片付け等で毎日が忙しく、片山にも一応メールとか電話を入れてた。
1週間ほどかかりやっと帰るって母に話し、母も身体に気を付けてなと言った先の事、次の朝母が起きてこないのに不思議になりふみさんが起こしに行った。
あわてて俺と妹を呼ぶ。部屋から飛び降り母の部屋に入った。
ふみさんが泣き崩れた。母が…冷たくなっていた。
すぐ医者を呼んだが、夜中に心臓発作を起こしそのまま・・・
でも綺麗な笑顔で胸に皆への手紙を残して…父の元へと旅立った。
テキに暫く帰れないと伝えた。
全て片付ける。ふみさんは俺達の側に居たいとだが、俺は辛いからと断った。
所が妹が藤岡の近くに一人暮らしをすると、けど……やっぱ心配だからふみさんは妹の側に居ると、身内は北海道に叔父が健在だから二人で行こうって話してたのに……。
俺は叔父さんに伝え、取り合えず片山の側に帰らなきゃと競馬場に戻る事も伝えた。
あっという間に1ヶ月、両親が相次いで亡くなり全てを片付け、妹とふみさんを藤岡に託し競馬場に戻った。
が……心にぽっかり穴が開いてしまった。何をするのにも覇気がない。
タバコ、酒に……と溺れ始めた。片山は何も言わないがただ側に居てくれた。
眠りに入ると抱き締める腕に自然と涙が……。
体重管理がうまく出来ない。
レースで勝てなくなり、どんどん片山と差が離れ、乗り馬も減り自暴自棄になってしまった。
調教中に落馬をしてしまった。
1週間病院のベッド……。片山は毎日のように来てくれるが、情けないから逃げるように病室を抜け出した。
叔父さんが北海道から出て来た。
あまりの酷さにテキから連絡が入った。
叔父さんと競馬場を替える話しをした。
退院して叔父さんと競馬場に戻りテキと話す。
このままでは駄目になってしまう。
片山の側に居れない……苦しい……から逃げる
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