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招待レース3
俺はにっこり笑って馬屋を出てサウナに入り汗を流した。
招待レースいよいよスタート。
人気は片山と分ける一番人気……。
ブラックの首を叩き立て髪にチュッ!それからゲートに入る。
ブラックは身体を揺らし気合いを入れ直す。
スタート
片山は俺をマークするようピッタリ走る。
4コーナーを回り片山は先に出た。
俺は少し遅れ見せ鞭するとそれだけでゴーサインだとブラックは知っている。
脚を替えスルスル~と上がって行く、片山の馬を置いて手綱は持ったまま5馬身差で差し切った。
片山は唖然として2着で終わった。
検量室へ行き、また馬の側に口取り式(撮影)があった為。
撮り終えてからテキと馬主、生産主と握手してから賞状を受け取った。
厩舎に戻り鈴木さんは
「お疲れ様❗さすがだ、ありがとうな拓美♪」
「いえ……足元は大丈夫ですか?」
「問題はないよ!拓美は馬にやさしいから大丈夫。」
俺はブラックの鼻筋を撫で下ろす
「ブラック有り難う♪……鈴木さん明日北海道帰るんでしょ?」
「……?あぁ、拓美は……?」
「……俺……今夜打ち上げ終わったら夜行で帰る事にしました。」
「えっそうなんですか?こちらの人達とは?」
「……ッ……もぉ良いんです。じゃあ向こうでな。」
寮に戻り帰る支度をしているとテキに呼ばれた。
軽く打ち上げに参加する。
二時間ほどして引き揚げる・・・準備を終え荷物を手にテキに先に帰る事を伝えた。
テキはまだゆっくりして良いと話してたのに?と不思議な顔をして了解した。
荷物を肩に掛けて競馬場を出た。
暫く歩くと片山が立って居た。俺は
「先輩、短かったけどお世話になりました。俺帰るわ、その内また遊びに来て下さい。じゃあ……」
「待てよ!車で送る」
俺は首を振り手を振って歩いた。
片山は車に乗り側に寄せて窓を開ける
「拓美待てって!送るから……話したい」
「良いよ。俺と話すのが嫌なんだろ?無理して話さなくて良いよ、疲れてるからこのままほっといてくれ!」
片山は車から降りて俺の腕を掴んで
「嫌じゃない!!!拓美、何を怒ってるんだよ!」
俺は思いっきり振り払った、その弾みで傷のある腕をミラーにぶつかった。
その場で腕を抑え下にうずくまった。
片山の腕を取り手当をする。
常に最近は怪我が耐えないから簡易救急箱を持参している。
「……ッ……ブラックは知らない人には凄く気性が荒い、この程度の傷でよかった。」
「……知らなかったんだ。そんな馬だなんて……油断していた。ごめん」
「……本当にもぉ良いから帰って下さい。夜行に間に合わなくなる」
「だから送るって言ってる」
「……だから良いって一人で考えながら帰りたい……ほっといて」
「……ッ……拓美……俺の事嫌いになったのかよ?冷たくしたから?」
「先輩……の方だろ!俺の事嫌いになったのは?俺は今でも愛してる。好きで好きで好きでたまんない位!……けど……先輩が俺を嫌いなら……諦める・・・よ」
「ちッ……違う!俺は拓美を嫌いにならない。好きで…大好きで愛してる!けど……あぁするしかなかった、苦しくて死にたくなる位悩んで、でもあぁするしかなかった!噂が流れて……拓美の酷い噂まで流れて……冷やかされて……ごめん」
必死に話す片山……涙がポロポロ
「…………カギ」
「……ッ……」
カギを受け取り運転席に座る。片山は助手席に慌てて座った。シートベルトを掛けてから走った。
「今日……何の日か分かる?」
「…………イブ。」
「俺は……ずっとずっ~とこの日を楽しみにして来た。テキに休みも貰ったんだ……一緒に過ごしたくて……でも断っちゃった。焼きもち焼いた。だって……優馬が女と居て、楽しそうだった。俺にはシカトをするし、俺は優馬に自分が何した?って……」
「…………ッ……、俺だって……一緒に過ごしたい。拓美を感じたい。今からでも話して……ッ……。」
首を振る。
「…………テキに迷惑掛けれない。今日はごめん。優馬がこの先変わらない気持ちが有るなら、そうだな~後1年だけ待てって欲しい。帰って来るから……優馬の所に。」
「……1年……?」
「そっ、ブラックホースあれは本当に大切な馬なんだ。優馬は気付いてないだろうけど……、優馬と同じ誕生日3月14日優馬と会えなかった分あいつを大事にしてた。」
「………………」
「来月から中央競馬に出張が決まってる。地方にはこんな強い馬が居るんだって分からせてやるって気持ちで乗っている、だから……優馬が本当に俺と居たいなら後1年……待てって必ず優馬の元に帰って来る」
悲しくても時間がないのにはどうにも出来ない。
片山は下を向いたまま……でも手を強く握って来る。
駅に着き、運転を変わる。
深く少しでも長く人の目も気にならない位唇を重ねた。愛してる……待ってる……
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