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第10話

それから、響は5分おき、否、1分おきに、LINE画面とにらめっこする羽目になった。 秀介は多分仕事中で、スマホチェックができていないんだ──。 分かっているのに、いつ既読マークがつくのか、あわよくば返信が届くのかと、気になって仕方がない。 お陰で武宮が厨房仕事の手を止めて、店舗経営のあれこれについて教えてくれている間も、タブレットにメモすることを失念する始末だった。 「ごめん、武宮さん……」 タブレットへのメモし忘れは、完全に響の落ち度である。 武宮は多忙な中教えてくれているというのに、一体自分は何をしているんだろう。 「たまには、そういうのも悪くないよ。響君は真面目だからねぇ」 そう言って笑ってくれるのは、武宮にとっての響が、まるで自分の子供のような存在だからなのかもしれなかった。 その頃秀介は離席してトイレの個室に入っていた。 少し前にマナーモードのスマホが内ポケット内で振動したので、きっと響からのLINEメッセージが届いたのだろうと、トーク画面を開いてみる。 「電話番号だけ……?」 まあ、昨日別れ際に「電話番号を教えてくれ」とは言ったが、実は知らなくてもLINEアカウントさえ知っていれば、無料で通話ができるのだと調べている。 なのでもっと別の、他愛のない話題でも振られるのかと思っていたのだが、少しアテが外れてしまった。 秀介は送ってもらった番号を、スマホの電話帳に保存し、個室から出た。 「あれ、牧原じゃん」 「あ……」 偶然にも、個室から出た秀介を待っていたのは、昨日ゲイバーへ連れて行ってくれた杉沢だった。 今日は朝からずっと忙しくしていたので、話すのは初めてだ。 「お前さぁ、あの『謎の美少年』とどこ行ってた?」 ちなみに、杉沢は、秀介が帰り際に店内を覗いた頃には、もういなくなっていた。 「いや、ちょっと近所の居酒屋に……」 響があの店舗の2階に住んでいるなど、口が裂けても言う訳にはいかず、秀介は曖昧に誤魔化した。 「やっぱ、あの子イケメンが好きなのかな?」 「は……?」 「いやさ、ほら、お前男前じゃん?んでね、店に集まってたヤツらと、『謎の美少年』は面食いなのかな、とか喋ってた訳だ」 まったく、余計な詮索をするものだなと、秀介は内心苦笑した。 とはいえ、よもやま話をしながら盛り上がっている面々の気持ちも、少し分かる。 響は際立った美貌の持ち主で、謎が多いので、あれこれ話したくなるのだろう。 「あ……いけね……」 杉沢を適当にあしらって自席に戻るが、響への返信をしていなかったことに、気付くのだった。

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